内容説明
恐ろしいが、しかし時には利益をもたらす神々、ふしぎな能力を持つ山男、空飛ぶ天狗、川にひそむ川童…。わたしたちの忘れかけた怪異な世界の物語を、簡潔な美しい文章でつづった「遠野物語」ほか、「雪国の春」、「清光館哀史」など、日本人の文化を考える柳田民俗学のエッセンスを収録。
目次
遠野物語
女の咲顔
涕泣史談
雪国の春
清光館哀史
木綿以前の事
酒の飲みようの変遷
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソルティ
171
妖怪話が読みたくて有名な本書を手に取りましたが古典で書かれていて読みにくく意味も何となくしか分からず、その他の短編も日本の民俗学的な要素で女の笑顔、泣くこと、衣服、酒、などについてかなり掘り下げて書かれていてくどくどしていて読むのが辛い。難解で遠野地区のノスタルジーも感じ取れなかったので「遠野物語remix」を読んでみます!「その日は嫁は家にありて打ち臥しておりしに、昼のころになり突然と倅の言うには、ガガはとても生かしてはおかれぬ、今日はきっと殺すべしとて大なる草苅鎌を取り出し、ごしごしと磨ぎ始めたり。」2019/03/08
藤月はな(灯れ松明の火)
36
読友さんが「『遠野remix』は想像させる余白がある」と仰っていたので記憶と比較しながら再読。原文はリズムが良く、さらさらと読めるのが特徴的です。一方、『遠野remix』の方はオシラサマの誕生譚の方で父親の心情が汲み取られているなど、人間の恐ろしさなどの感情にクローズアップしているような記述が見受けられます。また、あえて山など地形別にジャンル分けすることによって原文での時間軸に沿った因果関係ではなく、異なる事象でも同じ現象が起きている関連性を読者に仄めかすことで想像を掻き立てるということに成功しています。2013/09/13
テツ
30
まだかろうじて怪異がリアリティを持ちながら生きていた最後の時代を柳田國男が聞き集め書き記したもの。もうそうしたものが日本から絶滅してしまって久しいのだろうけれど集められた情報を読んでいるだけで毎回狂おしいほどの郷愁の念に駆られる。昔の人々の生活が丸ごとまとめて良かったなんてことは全く思いもしないし体験したいとも思わないのにこの感覚は何処から出てくるんだろう。帰りたいと、この場所に行きたいとばかり考えてしまう。久しぶりに岩手旅行に行かなくちゃな。 2018/09/04
藤月はな(灯れ松明の火)
24
再読です。カバーイラストに惹かれて購入しました。京極堂シリーズでも言及されているように柳田翁の評論は文学的ですね。耳嚢を連想させる聞き取りによる伝承の「遠野物語」に限らず、言葉(呪)と動作の違いと関係性、時代による物事や言動の移り変わり、文明開化によって切り捨てられた農村の文化などの評論が興味深かったです。井上円了氏の妖怪学によって妖怪などが科学で何でも解明されると思い込まれていた時代に「遠野物語」が出て民俗学の始まりとなったのは本当に喜ばしいことです。2011/07/29
mm
23
私が読んだ本のカバーは、飯野和義さんのイラストでもっと可愛かったよ。実は読んでいないと白状しづらい私なりの本100冊!を選ぶとしたら、間違いなく入る本を一つ潰したぜ。遠野を旅して、友人からきいた話をそのまま書くと言う設定で、明治43年に出版。この本が書かれるほんの10年前には、間違いなく河童に会った人間とか、山男、天狗が生活の中に同居していたのに、この辺りを境目として彼らは生息地がなくなる。その原因の一つは、冬ごもりの間囲炉裏端で語り継がれるという風習がなくなるからみたい。後、電気も犯人だと思うな。2018/08/09