感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
26
☆☆☆★ 露骨な性表現は正直どうかなと思うが、紀州の習俗的な雰囲気に激しい男女の交接は似つかわしいものに思われた。性に関しては男はむしろ果敢なく、女は強かだと思った。「赫髪」「鷹を飼う家」が特に良かった。2017/12/13
くろすけ
9
全集にて再読。粗野な男と名前のない女の交接が繰り返し描かれる。全身でぶつかりあう欲情に任せた荒々しい情交の中に、どうしようもない愛しさが滲み出す瞬間があって、それがはっとするほどピュアで心を揺さぶられる。これだけ執拗な性交場面を描きながら、劣情を通り越して人間という生き物への愛情を呼び起こさせるのが筆の力というものか。
芋煮うどん
4
たぶん17年ぶりに再読。短編のどれも性描写が生々しく、当時はあまりなじめなかったが、あらためて読んでみると、結構違和感がない。年とったからかなあ。特におもしろかったのが、鷹を飼う家。映画にでもなりそう。2013/05/20
sansirou
2
五本の短編でできている。はじめの三本は、けもの的な男と行きずりの女の話で、どちらかというと男の視点から書かれていて、ちょっと暴力的。後の日本は女の視点から書かれていて、女が暴力的になっている。紀州の路地を舞台にした、濃い話でした。 2013/01/24
YO)))
2
短編集.絡み何回ってな官能小説じみたものが多くて,中上を初めて読む人にはとてもじゃないが奨められない.「交接する」と書いて「おめこする」と読ませるのはなかなか素晴しいジャンプ読みではあるが.「鷹を飼う家」は,もう少し抑制が効いていれば傑作になったかもしれない(ラストシーンは盛りすぎだと思う). 母と兄妹が住む家に嫁いできたシノは,夫の可愛がっていた鷹をいたぶることで,より深くその家に捕われてしまう. 山と海と川に挟まれたデッドエンドな河口の町で,煮凝りのような生柔らかい共同体として暮らす家族を描く.2012/03/18