内容説明
ある朝、一隻の宇宙船がペンギン村に不時着して、その中からニコチャン大王が部下を一人連れて降りてきた…。この本に登場するのは則巻千兵衛博士、ドクター・マシリト、鉄腕アトム、キン肉マン、サザエさんetc。ポップ小説の旗手が新しい文学に挑戦する破天荒な痛快ファンタジー。
目次
ペンギン村に陽は落ちて―前編
愛と哀しみのサザエさん
いつか同時代カンガルーになる日まで
キン肉マン対ケンシロウ
連続テレビ小説ドラえもん
ペンギン村に陽は落ちて―後編
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
52
マンガと文学のテクストへの挑戦状と受け取ればいいのだろうか……?2018/03/19
メタボン
33
☆☆☆ ポストモダンとか脱構築とかが話題となっていた頃、浅田彰や高橋源一郎がもてはやされていたな。そんな時代の作品。ハチャメチャなパロディで、その試みは面白いけれども、読了後何も残らなかった。その空疎さ自体がこの作品の目的とするところなのかもしれないが。2021/07/19
そうたそ
23
★★☆☆☆ 目次を見るだけで、何だこの作品は、と思うことだろう。サザエさんやドラえもんやアラレちゃん、アトム、ウルトラマンなどなどが登場する。しかも、それらの既存のキャラクターの破壊されており、やりたい放題。何が書きたかったのかなあ、と作者の意図がつかめず終い。この作品が発表された当時はこういった二次創作的なパロディは斬新な切り口とされたのだろうか。今では珍しくもなんともないし。深読みされるべきものなのか、ただ単にパロディと割り切って読むべきものなのかよくわからなかった。2018/09/11
田氏
21
この『しょうせつ』はメタファーでもパロディでもなく、固有名詞という固有名詞がふだんの服を脱ぎ捨てて、裸になって踊り狂うヌーディスト・『しょうせつ』でした。序文のことばを信じるなら、アンドレ・ブルトン的テレビ」「るせえな」とキン肉兄貴が割って入る。そこに現れたケンシロウが「とろとろ」と言った次の瞬間、北斗神拳で爆散するわたし。飛び散ったわたしのかけらは、中島みゆきソング・ブックと、るそんすけざえもんと、トヨタ・カローラ・ツーリングの顔や胸やくるぶしにくっついたのち、ウッドストックがついばんで見えなくなった。2020/02/13
かみしの
9
少年期を80年代に過ごしてきた人と、僕のように80年代的アイコンを知識としてしか知らない人間とでは、本作の受け取り方は変わってくるかもしれない。もちろん変わらないかもしれない。僕は大笑いしながら読んだ。例えば“ドラえもん”と聞くと僕たちは、例の青いのを思い浮かべるわけだが、本作のドラえもんは分裂し慇懃に語り出す。表象と行動のズレが笑いを生む。中身を抜かれたアイコン達は高橋源一郎に操られて踊り出す。ペンギン村後編はメランコリックで読みやすかった。この作品の延長に『九十九十九』があり、『悪と戦う』がある。2013/05/21