内容説明
聡明で、魅力的な表情の女性だ―十七歳の直樹が年上の早苗に抱いた第一印象である。高校生のバイオリニストの直樹は、音楽を愛しながらも、ピアニストの父と同じ道を進むことをためらう。そんなある時、美貌の早苗に出会った。その時から彼の生活に明らかな変化が起きる。高校生の愛と自立、人生の試練を流麗に描く青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アポロ
63
音楽は偉大だ!ピアノとバイオリン習ってるのに柔道?って思いがずっと頭の中をグルグルしてしまった!これも自由に生きろってことだったんだろうか!2017/11/19
青蓮
19
17歳の高校生バイオリニストが、様々な音楽家達と出会うことによって成長していく音楽青春小説。傷つき、悩みながら、しかも誠実に生きようとする人間の魂。ところどころに散りばめられた人間の「弱い心」…その純粋さ、美しさに何とも言えない余韻が残る。2019/07/21
HERO-TAKA
18
父から音楽の才と努力できる環境を引き継ぎ、文武両道で女の子にはモテモテ。最近は幼馴染のスポーツ少女が気になっていて、でも沢山の男から求愛を受けている年上の女性にも惹かれてしまう。共感要素ゼロの主人公の持っている者の悩みという感は否めないが彼もまた自分に不安を抱えて生きている。「いちご同盟」もそうだったが、三田さんの小説に登場する大人の男たちに魅力を感じる。表面的にはそれぞれ大人な彼らも、偶に垣間見える姿は語り部と同じ少年の延長で、脆くフラジャイルな心情が続いている。それを受け入れて今日も生きている。2017/04/22
ペトロトキシン
12
タイトルだけみると爽やかな高校生が登場する青春ストーリーを想像するが、後半は予想外に暗い内容となる。主人公の行動から、主人公が本気で音楽の道を目指しているのかは微妙なところである。その行動とは、音楽家でありながら柔道をやっている点。いや別に音楽家がスポーツをするのは構わないのだが、指を怪我する可能性の高い柔道を選択するのかが甚だ疑問。西村の言葉じゃないけど、主人公は幼なじみの彼女にもう少し優しくしてやればいいのにと歯がゆい気分。2014/05/05
ふみ
7
ベートーベンのスプリングソナタがタイトルのこの本。主人公直樹は、ヴァイオリン弾きにして、柔道も強い17歳、イケメン(←想像)。複雑な家庭環境と早苗の登場で、話は決して明るくないのに、各所に散りばめられた名曲がそれを彩っていく不思議なテイストです。話にもでてくるけど、このソナタは、ピアノが伴奏ではなく、ピアノもヴァイオリンも主役の曲。どうせなら、それにひっかけて、父目線のストーリーももう少し知りたかったような気がします。これ1冊だと、物語の終結として物足りない感あり。2012/09/20