内容説明
中宮定子に仕えた清少納言が、後宮の好尚や有り様を記録した『枕草子』は、一人の作家による随想と小説を、一冊にまとめた作品集といっていい。「春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎわ…」この冒頭は、あまりにも有名である。にくきもの、心ときめきするもの、見ぐるしきもの等々、清少納言が、その美意識をすみずみにまで生かしきった世界が、いま現代語訳で新たに蘇る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
17
○軽妙な訳であり、面白かったです。枕草子は清少納言の素の感想が出ているように感じられ、また彼女の性格の悪そうな点も含め好きな作品です。2021/04/10
よしひろ
8
1000年の時のふるいに生き残る作品は価値が高い。清少納言の随筆。をかし文学と言われるが、生活で使う道具、たとえば火鉢や櫛箱、それに虫や人の立ち振る舞いに至るまで実に繊細に観察していることがわかる。そして、時には辛辣すぎるコメントが面白かったり、うなづけたり。ヨーロッパの小説家のような、一言一句に風景を想起させる表現力を感じた。平安時代の宮中で、女房としての視点は今読んでも面白い。2015/08/22
マカロニ マカロン
7
個人の感想です:B。『枕草子・上』桃尻語訳(橋本治)を読書会のテーマ本で読んだが、昭和末期の女子高生言葉がそのまま文章として書かれていて、とても読みにくく感じた。そこで、大好きな杉本苑子さんの現代語訳が図書館にあったので、借りてきた。原文の雰囲気を壊さない現代語訳はとても読み易かった。「チャンス」とか「ショック」といったカタカナ言葉も使っているが、全く違和感なく読めた。2019/06/12
ZEPPELIN
5
この清少納言という人、どんだけ性格悪いんだろうか。訪ねて来た人を居留守で追い返すなんて失礼で出来ないと言いながら、狸寝入りをお越しに来る召し使いが腹立たしいなんて、おかしいでしょうが!また、あんな男はダメ、こんな男もダメ、女同士の友情はほとんどが怪しいと文句は垂れるのに、お仕えする中宮定子のことはべた褒め。自分自身を称賛する文章も極めて流暢。アホか!と思うけれど、一千年後に文章を残すような人物もこんなアホなことを考えてたと思うと、ちょっと安心してしまう2015/01/19
桑畑みの吉
4
1986年4月に単行本として刊行された書籍の文庫化となる。原文を読んでもサッパリ分からないと思うので、なるべく平易な現代語訳のものを探して本書を選択。実際、非常に親しみやすい表現でストレスなく読み終えることが出来た。宮廷きっての才女である清少納言の視点は、よく言えば1000年後の現代にも通じる感受性、「ああ…これ今でも同じだな~」と同意できる。悪く言えばお高く止まった嫌味な女の側面もある。優しいご主人様(一条天皇・中宮定子)とのエピソードはいずれも微笑ましいが、その幸せな時は長く続かなかったようだ。2024/02/28