感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MICK KICHI
65
萩尾望都さんの解説必読。萩尾氏を漫画家志望に決意させた作品。殺伐とした幕末の京都を舞台に、親を土佐藩士に殺され、失意の内に仇討ちを目指し新撰組に志願する深草丘十郎、そこで出あった凄腕の剣士、鎌切大作。二人とも尋常ならざる境遇に身を置くうちに友情が芽生える。命により暗殺を企てた相手の一人に情をかけたが、逆に仇として狙われる丘十郎。大義を心に秘めて行動する大作。運命が両者に過酷な選択を迫る。時代の中で翻弄される若者の喪失と再生を描いた作品。優しいタッチの表現に救済される。2020/05/17
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
54
黒に青の表紙カバーが格好良い文庫。表題作は再読。少年の友情を軸にした、文久3年から池田屋事件までの新撰組物語。この漫画を読む度に新鮮なのが、司馬遼太郎の書いた幕末物の影響が皆無という事。男前の近藤勇に美青年ではない沖田総司、インテリの坂本龍馬…今ならば司馬の影響でこんなキャラクター設定にはならない。手塚治虫は五稜郭まで描く予定だったらしい。芹沢鴨の死後は土方歳三が悪役になる気配なので、函館戦争まで描いて欲しかった。併録は『新・聊斎志異』の『女郎蜘蛛』と『お常』。『お常』が優しくて怖くて良かった。2014/05/03
こばまり
51
小学生の頃、幼馴染宅で粗方読んだつもりの手塚作品だがこれは記憶になかった。読友様のご指摘にもあるように、司馬「燃えよ剣」の翌年に発表されるも影響は皆無。土方、沖田など信用ならない顔つきをしていて新鮮。萩尾望都先生の解説がグッとくる。2018/05/30
takka@乱読
14
この本には手塚治虫の『新撰組』『女郎蜘蛛』『お常』の3作品が収録されている。表題作の『新撰組』で自分は手塚治虫が描く歴史漫画を初めて読んだ。フィクションで史実にあまり沿ってはいないが、父の復讐を企む主人公丘十郎とそのライバルであり友人の大作が新撰組に入り、成長して最後には…という展開がうまく練り上げられていた。復讐や世界の価値観を知らずに日本という小さな世界で争う日本人に諭す坂本龍馬が出てくるが、龍馬がまさしく戦争体験をした手塚治虫が伝えたいことと重なるのは気のせいだろうか。2021/09/15
いさらこ
10
新撰組の架空の隊士を主人公にした物語。史実だとか時代考証とかは関係ない。芹沢鴨の悪役っぷりがいい感じ。話は池田屋事件までだけれど、新撰組的には芹沢鴨の粛清が山場かな。物語の山場は親友との対決シーン。花火が上がる中の決闘はとても印象的。他に新・聊斎志異シリーズの「女郎蜘蛛」と「お常」。戦中戦後の怪談。これもよかった。2014/12/14