内容説明
カイは笑うことも、泣くこともしない。普通の子ではなかった。幼稚園に入って間もなく、両親が目を離している隙に、群衆の谷間を潜り抜け、都市の回廊へと迷いこんで行った。そこでは、少年と少女の一団が、カイを待っていた。カイが突然叫ぶ。「ヘンシツシャを退治に行こう」カイを先頭に少年達は突き進んでいった。叙事詩的世界を描く、長編現代の神話。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
裕樹
3
出版されてすぐに買ったのじゃないかな、と思います。一時期どこに行くにも持ち歩いてました。 小説としては、やや未完成さを感じる難解な作りでしたが、言葉の運びがすごく好みだったのと、カイ本人もでしたが、それを取り巻く大人たち、とりわけ両親の心情が胸に残りました。ミュージシャンでも、詩人でもない辻さんの小説の中では一番実は好きであったりします。あらけずりだけど。
rubbersoul
2
「いいかね、青春なんて、私達の人生の中では、ほんの一瞬なんだ。確かにあの時期は、 キラキラしていて美しかった。しかし、その一瞬の過去にしがみついて生きていると、残りのほとんどの人生を無駄にしかねないのだ。本当の人生は、残りの方にこそあるのだよ。…私達は過去に生きてはいけない。たとえ人生が、あと一日だっとしても、未来に生きなければいけないのだ。その一日を素晴らしくすごせれば、それまでの人生は本当の意味での幸福に変わるのだよ」2019/07/09
yoshiwoemon
2
ここにあるのは全能感をかかえてじりじりとする子供たちと、冷めて疲れ切った大人たちと、それを超越して革命を起こさんとする老人とで、迷路の中の様な都会の中をカイ達子供がさまよう描写が何だかぐっと来たが、なんだか最後は陳腐な映画の様なドラマティックにすぎる終わり方で終わったなという気もしたが、ともかく話全体は重苦しい、例えば『モモ』の灰色の男たちが世間を支配してしまった後、みたいな印象で、現代を舞台としているのだが、なんとなくディストピアもののようにも読める。読んでいてなかなか読み進められず苦痛だった記憶。
らんい
1
不思議。カイは結局どうなったのだろう。だけども叫びのようで、エグくて、大好き。2017/06/18
m.taya
1
生涯忘れることのできない作品のひとつ。すべてを理解できたかはわからないが、おそらくそれでいいような気がする。理解できない面白さというのを知った初めての作品だった。