内容説明
朝子は、活気あふれる19歳のロックシンガーだ。ライブで人気を集めるバンドを率いている。騙されて行った京都で、そんな彼らが遭遇する愛と冒険の日々…。切ない恋心に胸を焦がしたことのある人なら、自分の不誠実な生き方に後ろめたい想いを抱いて生きている人なら、読んで涙せずにはいられない、花村万月、鮮烈のデビュー作。第2回小説すばる新人賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
120
著者の初読みは、デビュー作にして小説すばる新人賞受賞作。子供の頃からの問題行動、喧嘩に薬物中毒、アルコール中毒と波瀾万丈の人生を送ってきた著者、花村萬月。バンドのボーカルである朝子とそのメンバー。エロもあるけど欲情的ではなく、どこかもどかしく優しい。著者の経歴からすれば、冷酷非道な救いようのない世界も覚悟していただけに、予想外の温かさが妙に心地よい。まだまだ著者の作風は掴めず未知数。ちょっと気になる作家を見つけた感じ♪2020/12/08
takaichiro
87
花村さんのデビュー作。性と暴力と音楽を編み込みながら、人間ドラマを描くベースは処女作から貫いているのですね。こう書くと粗暴な作品と映ってしまいますが、登場人物はキャラが立っていて最近日本映画で流行りのスタイル、昭和がにおう人間味溢れるストーリー展開。そうそうこういう奴に限っていいところあるんだよなとか、心の底に隠している優しさがふとした時に出てしまう男前感とか、イキって生きていくと決めたのに弱さを見せてしまう女の性だとか、懐かしく思えるシーンが重なり合い、ロック調のハーモニーが聞こえてくる様な作品でした。2019/07/01
ちょこまーぶる
43
恐らく筆者が伝えたかったことに気付けなかった一冊でした。19歳の少女がバンマスをしているブルースバンドの話ですが、そのメンバーのコミュニケーションの方法があまりにも性的な行為が多く(情緒的なつながりもあったのでしょうが・・・)、その描写に気がとられてしまい、十分に読みこなせなかった感があります。読んでいて、19歳の少女の大人すぎる言動に少し怖さも感じてしまいましたね。ただ、救いだったことは、施設から脱走してきたメンバーの子どもである健くんのピュアなところと将来どんなドラマーになるのか?という妄想ですかね。2015/07/05
hit4papa
41
花村萬月さんの作品は、性や暴力に垣間見える不器用な男女の愛が印象的です。本作品はデビュー作で、過激さはまだまだなりを潜めているものの、もどかしいぐらいの愛が漂っています。登場する男性たちは、その後の作品のキャラクターに通底するものがあります。音楽ものの王道ではありますが、様々な問題を乗り越えてバンドとして成長していく姿が描かれており、個性豊かな男女(と男男!)の恋愛がストーリーを盛り上げてくれます。クライマックスの雨の中のライブシーンは鳥肌もの。著者の音楽に対するアツい思いが伝わってきます。 2016/09/23
puu
19
本当に久々の花村萬月。読友さんのアツいレビューに惹かれて読了。当時(もうかれこれ20年以上たつのか、早いな)よく読んでいた萬月節を思い出していろんな感情がわき上がった。物語全編にわたってブルースが聴こえてくるようなバンドものだがこれが萬月のデビュー作か。萬月のすべてが入っているような著作。解説の坂東こと馳の「自分の不誠実な生き方に後ろめたい想いを抱いて生きている人なら涙せずにはいられない」うん、流石。2021/05/02