内容説明
ささやかでありふれた日々の中で、たとえどんなに愛し合っていても、人は知らずにすれ違い、お互いを追いつめ、傷つけてしまうものなのか…。夫婦、親子、恋人たち。純粋であるがゆえにさまざまな苦しみを抱え、居場所を見失って、うまく生きていくことができない―そんな人々の魂に訪れる淡い希望を、やさしくつつみこむように描く四つの物語。天童荒太の本質がつまった珠玉の作品集。
著者等紹介
天童荒太[テンドウアラタ]
1960年愛媛県生まれ。86年「白の家族」で野性時代新人文学賞、93年「孤独の歌声」で日本推理サスペンス大賞優秀作、96年「家族狩り」で山本周五郎賞、2000年「永遠の仔」で日本推理作家協会賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
にいにい
108
以前、一度読んでいたのにタイトルを失念していた。ストーリーは、直ぐ甦えり、心の奥に響く。愛があるってどう判断するんだろう。愛がないとどうなるのか。相手を思いやっているつもりの自己中、心の病まで繋がる孤独、表現が苦手な人々でもちゃんと伝えられるものがある、喪われゆく君への接し方、人と人の関わり方は、難しい。「分かり合える為に」のヒントが散りばめられた4篇の中短編。天童さんならではの掘り下げ方。「悼む人」に繋がる内容も垣間見える。じっくり読み返せて良かった一冊。最初の2話に登場するダメ男は、なんか見てられない2015/12/03
Lara
95
天童荒太氏は、何と言っても「永遠の仔」の衝撃が大きかった。寡作な作家さんのようで、久しぶりに読んでみたが、重かった。短編4作品集。精神を病んだ人たち、救い難いような印象だが、それぞれ自分で、自分たちで前に進んで行こうとする姿は、強く印象に残る。明るい雰囲気はないが、何故か見過ごしてはいけないようなテーマだ。天童氏の人間愛だろうか。2020/11/03
遥かなる想い
88
家族愛のあり方を描いた短編集である。 著者らしく 重いが、底に流れる 家族への想いが慎ましく 読者に伝わってくる。まわりに翻弄されながらも、前を向き 生きていこうとする人々を 丁寧に 描いた、著者らしい短編集だった。2023/10/28
chantal(シャンタール)
77
様々なストレスにより、精神疾患を患ってしまった人々を描く短編4編。そんなテーマだけに楽しい読書ではない。登場人物の行動や考え方にイラつく事も度々。きっとこんな風に他人に思われることがストレスになるんだろうなあ、とは思っても私だって日々いっぱいいっぱいで過ごしてるし、聖人君子じゃないし、他人の精神的な事まで構ってられない、とも思ったり。程度の差はあっても誰でもストレスはあるし、ギリギリの所で踏みとどまってる人もいる。お互いが少しずつ思い合って優しくできる社会なら、そんなストレスもかなり緩和されるのだろう。2021/08/31
s-kozy
76
「心や体や生活の、ちょっとしたタイミングのずれによって、相手を傷つけたり、追いつめたり、みずからを苦しめたりする人々が登場」(文庫版あとがきより)する四編からなる短編集。これらを読むことで当たり前に生活を営めることの尊さに思い至らされる。ただ、どの話も男性方の主人公に幼児性が強く残っているのが気になった。著者が男性だからなのか?そこにあまり意図はないのか?まぁ、天童荒太らしさが十分味わえることは間違いないでしょう。2014/02/06