内容説明
リンパ肉腫の青年が言った。「自分の入る墓を見てきた。八ケ岳の見える景色のいい所だったよ」青年にぼくはささやいた。「よくがんばってきたね」最後まで青年は誠実に生きて、死んだ。そこには忘れさられた「魂への心くばり」があった。テレビドラマ化されるなど、マスコミの話題をさらった感動の書をあなたに。
目次
命を支えるということ
患者が来ない病院
ぼくが田舎医者になった理由
チェルノブイリへ
がんばらない
医療が変わる
あなたはあなたのままでいい
著者等紹介
鎌田実[カマタミノル]
1948年東京都生。東京医科歯科大学医学部卒業。74年、長野県の諏訪中央病院に赴任。一貫して「住民と共に作る医療」を実践。チェルノブイリの救援活動にも参加
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
70
2003年に出されたこの本、14年たった今も諏訪病院はそのままの患者に優しい病院であるだろうか・・。こちら地元で1980年に創設された総合病院、昔は田圃に囲まれた長閑な病院で地下にも喫茶店も散髪屋さんもコンビニみたいなお店もあった。今じゃ大きな病棟ばかり建って、患者のケアや看護師のゆとりさえ与えられていない。信州にはこの病院に、南木佳士氏の務められる佐久病院が。医療が進歩するのは有り難い。「切ったり張ったり」が済めば、「はいリハビリね!はい退院ね!」・・私達はロボットではない。痛みも感じるし、2017/03/19
mt
37
注射を打ち、薬を土産代わりに喜んでもらって帰ることが習慣づいている地域で、潰れそうな病院を立て直す院長の奮闘記と思いきや、死に寄り添うあり方が見事に描かれていた。本人も家族も満足する死に方ってどんなんだろうと考えさせられる。固有の感情や生きてきた環境が異なるように、同じ死に方などないのに、同じ看取り方がおかしいことに気付いていなかった。マニュアルにない看取り方を自分で考え実践しようとする医療従事者たちにの真の思いやりは、この本の中では満ち溢れていて、死を美化することなく身近なものに感じさせてくれた。2016/03/29
UK
37
地方にある病院の医者が色々な患者さんの最期の場面を語るエッセイ。神様のカルテの実話版と言ったらちょっと言い過ぎ(?)か。潰れそうな病院に赴任したところから、地域に根付いたネットワークを張り、院長となってチェルノブイリで被害に遭った人たちを助けに飛ぶような国際的なレベルの活動に至るまでの年月をカバーしている。表題は末期の患者に対し、自分たちが代わりにがんばるから、もう自然にしていて下さいね、という労いの言葉。死や病に長年向き合っていた人の言葉は素朴だが事実を背負っているだけに胸に響いて重い。 2014/12/03
のんすけ
31
よかったです。長野県諏訪中央病院での末期ガンの方とその家族との関わりと、医師や看護師との心温まる話がたくさん。quality of life を学生の時から福祉の現場でも言われているけど、まさにそれが医療の現場で実践されている。人間は必ず死を迎えるわけで、その最後の瞬間をいかに迎えるかが人生の集大成。こんなふうに自己決定を重視してくれる医師は近くにいないと思う。それが残念。2015/02/06
マジョラム
23
患者さんの望むような医療をするって、理想を言うのは簡単だけど、難しい。多くの医療スタッフの努力の結果、幸せな最期を送ることができた人はいるのだ。人の人生の締めくくりは、やっぱり大切なんじゃないかなあと思う。100人いたら100通りの正解はあるんだろうけど、大切なのは、自分の大切な人と同じように患者さんを見てあげることじゃないかな。なかなかできることではないけれど。2021/07/29