内容説明
花沢支配人は青ざめた。なんの因果か、今宵、我らが「プリズンホテル」へ投宿するのは、おなじみ任侠大曽根一家御一行様と警視庁青山警察署の酒グセ最悪の慰安旅行団御一行様。そして、いわくありげな旅まわりの元アイドル歌手とその愛人。これは何が起きてもおかしくない…。仲蔵親分の秘めた恋物語も明かされる一泊二日の大騒動。愛憎ぶつかる温泉宿の夜は笑えて、泣けて、眠れない。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
51年東京生。「地下鉄に乗って」で第16回吉川英治文学新人賞、97年「鉄道員」で第117回直木賞、00年「壬生義士伝」で第13回柴田錬三郎賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
403
極道小説家が叔父の親分の訃報から再び「プリズンホテル」に投宿。彼の1泊2日の滞在で起こるドタバタ過ぎる物語。つぎからつぎへと湧き出てくる仕掛けは、その数も凄いが、内容も戦争論のクラウゼヴィッツから下世話な数え歌まで広範囲。通底する主題は人間が欠いてはならない利他的想いやり。「実存社会の不平等」「法的社会の矛盾」「権力の虚構」を「男と女」「大人と子供」「ヤクザと警察」「伝統と現実」「社会正義と社会悪」を対立させ、辛辣な皮肉をもちいながら、根拠など無くてよい優しさでの理解へと誘導する。圧倒的な浅田力に感服。2020/02/23
HIRO1970
321
⭐️⭐️⭐️浅田さん36冊目。最高のエンターテイメント作品でした。ピカレスク作品は実は浅田さん以外は余り読んでいないのですが、極道と警察が襖を隔てて隣の部屋で大宴会を行う話の筋は浅田さんならではの展開でした。これは現代版の人情物ですね。一見おちゃらけた展開ですが、実に味のある深いお話でした。まだ中盤なので後半も楽しみです。皆さんにオススメです。2015/10/08
三代目 びあだいまおう
311
俄然面白くなってきた。珠玉の言葉の宝庫!ヤクザの経営するリゾートホテル、訳あり客だろうが何だろうがお構いなしに受入れ精一杯のヤクザ気質でお・も・て・な・し。警察一行のどんちゃん騒ぎと襖隔ててヤクザの宴会、何も起こらない訳がない!予想外のドンパチ、収めるドラマ。ヤクザVer. ホスピタリティーがとにかく筋が通って潔い!道を極める、だから極道!相変わらずいけすかねぇ小説家も少しずつ変化が見えてきた。人が見栄や体裁という内なる鎧を脱ぎ捨て素直になれる場所。男にとっての『いい男』!そしてミカちゃんに泣いた‼️🙇2020/04/13
ehirano1
282
シチュエーションはどこからどう考えても悪い予感しかしないというとんでもないレベルwww。しかしこれを爆笑と感涙で収めてしまう著者は流石としか言いようがありません。一方で、2作目にして登場人物達の成長が随所で認められ、なんだかそれを見守っているような錯覚に陥ります。その意味でつくづく思うのは、艱難辛苦と成長はセットであるということでした。なんでも次作はあのマリア看護婦長がプリズンホテルにいらっしゃるとかでとっても楽しみです。2023/01/11
seacalf
254
今回も見せ場たっぷりでぐいぐい読ませること。思わず笑ってしまう位とんでもないカオス状態のホテルに一晩一緒に泊まった気分を味わわせてくれる。幕間のないドタバタ劇のような展開の中にピシッと任侠ものらしいメリハリを効かせるのだから面白くない訳がない。目に余る木戸先生のクズっぷりは相変わらずで、魅力溢れる登場人物の中で下衆野郎の誹りをひとり抱え込んでいる。だがそこは浅田次郎、終盤では彼の真っ当な部分も描いてくれる。安藤優子さんの解説が意外にいい。プリズンホテルに泊まりたいと希うひとりとして激しく同感なのだ。2022/08/15