内容説明
ミステリーの、ひいては小説の約束事に挑戦する「そしてすべて目に見えないもの」。魂の浄化を求めて果てのない旅を続ける哲人を描く表題作。物語の欺瞞と抑圧を暴き、その極北に挑む「籤引き」。みずみずしい創作活動の魂の軌跡をあざやかに示す酒見ワールドの原点。アイロニカルで寓意に富む5編からなる作品集。中島敦文学賞受賞作。
著者等紹介
酒見賢一[サケミケンイチ]
福岡県久留米市生まれ。89年に「後宮小説」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。92年本書「ピュタゴラスの旅」で中島敦文学賞を、00年「周公旦」で新田次郎文学賞を受賞
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感想・レビュー
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James Hayashi
33
中島敦文学賞受賞作を含む短編集。アイロニカルな作品で読後感はよくない。しかし読み応えのある作品もあった。ギリシャ系の名前が多く好みでないというのもあるが、「虐待者たち」などオチがよくわからず残念。2019/11/07
てふてふこ
16
バラエティに富んだ短編集。表題作は数理と宗教が調和=音楽、の追究をするピュタゴラスと弟子・テュウモス。思想の違う両者のやり取りが興味深かった。「籤引き」も同じく両者の違い。未開の村人と文明人。郷に入っては郷に従えと言うが、どこまで柔軟になれるのか。この2作が好きです。2014/03/01
ゆうげん
8
短編集。後半になるほど面白くなる。「虐待者たち」はハードボイルドやファンタジーを換骨奪胎したような話で、現実と幻想の間を行ったり来たりするような雰囲気が面白かった。2010/09/07
色々甚平
7
「籤引き」が自分が文明人であり土人たちよりも優れていると奢っていた男が自分の首を締めていく姿が見応えがあった。嫁さんのように柔軟性を持っていれば・・・。どの話も個性的ながら短編でうまくまとめられていてもっと長く読みたい!とも思わず丁度良く読み終えることができた。短篇集の中でも良作に入る印象を受けた。2013/12/22
miroku
7
「籤引き」と「エピクテトス」が面白かった。酒見さんは上手い。2011/02/17