内容説明
東京で活躍する作家・ヤザキはある夜、中学時代の同級生・アオキミチコから電話を受ける。初恋の女性だった。懐かしく切ない声に、ヤザキは、失われた「黄金時代」を思い、ハウステンボス内にある唯一無比のフレンチレストラン「エリタージュ」での再会を約束する。そして、二十年という時間を経て、「はじめての夜」がやってきた。年月と共に初恋は消滅したのか、それとも…。中学時代の初恋が、溜息の出るような最高の料理とともに今、切なく甦る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こきよ
72
とりとめのない会話と料理。儚く淡いなかにも何かを見いだせる大人の恋愛といった趣。村上龍氏一流の作品であろう。久しく行っていない、フレンチのコースなど行ってみたくなる。2014/08/03
かもめ(甘き絶望)
20
東京で作家として生きるヤザキは、ある日中学時代の初恋の相手アオキミチコから、再会を求める電話を受ける。二人は20年ぶりに郷里の佐世保・ハウステンボスの高級フレンチレストランで話をする。ヤザキとアオキミチコは様々な料理を挟んで、昔の話をする。アオキはなぜ、今になってヤザキに再会を求めたのか?何を話したかったのか?核心に近づきそうで近づかない、そんな小説。93年に雑誌に連載された作品。バブル崩壊間もない時期。「引きこもり」も顕在化していなかった時代。ある種文学的価値の高い作品か。読解度3.4 総評3.62022/09/15
rueshё
17
過去の記録を遡って登録。佐世保弁。2004/06/29
nobody
15
「うん、変だよ、食べる時は、あ、おいしいなと思って食べて、その後は、ああおいしかったな、と思えばそれで充分じゃないか、それなのに言葉がどうのこうのとかさ、失われるとか捜すとか本当にうざったいと思うよ」、そのうざったいのを読まされるのが我々である。村上龍は食べておいしいなだけで小説が書けないのである。村上龍は主題をもたない。中身がないから重畳羅列で一を三にしカタカナ新奇語とともにマシンガンのように畳み掛けて勢いづかせて考える暇を与えないで誤魔化す、切り抜ける。〈復讐〉は主題になり得たが手法は「彼らよりも楽し2020/08/18
ちぇけら
10
『69』から20年、ハウステンボスにあるレストラン「エリタージュ」で、ヤザキとその初恋の相手アオキミチコが料理を食べながら話をする。「今は、何かが決定的に足りない感じがしてしょうがない。ただ、足りないものはセックスではない」歳を重ねても、かつての思い出は消えることはない。ただ忘れるだけなのだ。まだそんな年齢にはなっていないから、よくわからないけど、きっとそういうものなのだろう。どこか哀しいけれど、村上龍特有の迫ってくるような物語が、静かに胸を打つ。2017/05/08