内容説明
ハゲワシの前方にうずくまる少女の写真でピュリッツァー賞を受賞したカメラマンの、語られない自殺の背景とは?11歳の頃の自分が写っている写真が、絵はがきとして売られているのを雑貨店で見つけた教師は…。南アフリカ共和国、ルワンダ、アンゴラをはじめ、南部アフリカを自ら歩き、そこに息づく声を拾いながらオムニバス形式で綴る。第3回開高健ノンフィクション賞受賞作、注目の文庫化。
目次
第1部 奇妙な国へようこそ(あるカメラマンの死;どうして僕たち歩いてるの;嘘と謝罪と、たったひとりの物語;何かを所有するリスク)
第2部 語られない言葉(絵はがきにされた少年;老鉱夫の勲章;混血とダイヤモンド;語らない人、語られない歴史)
第3部 砂のよう、風のように(ゲバラが植えつけた種;「お前は自分のことしか考えていない」:;ガブリエル老の孤独)
著者等紹介
藤原章生[フジワラアキオ]
1961年生まれ、ジャーナリスト。北海道大学工学部卒業。鉱山技師を経て89年に毎日新聞社入社。アフリカ、ラテンアメリカ特派員ののち2008年よりローマ特派員。05年『絵はがきにされた少年』で第3回開高健ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
241
広大なアフリカ大陸。黒人を、一括りには絶対できない、と感じた。民族も人種も多種多様、良いも悪いもなく、それぞれなんだ、と強く思う。差別と貧困の意味を、考えさせられた。「食料はタダでもらいたくない。まだ肥料をもらった方がいい」という、現地の声にも耳を傾けたい。「タダの食料が来ると、もう働く気がしなくなる」からだ。2021/08/09
いつでも母さん
187
アフリカ大陸は映像と想像でしか知らない。作者・藤原さんが住んで取材して感じた事を11の章に渡り綴られている。知らぬ事とはいえ圧巻です。肌の色、差別、貧困、搾取、灼熱の大地、内戦・・私の中のイメージがガラガラと崩れ、現実はもっともっと厳しく複雑なのだろうと思った。そこに暮らす人々の表と裏。何も出来ない無力感でいっぱいになった。今頃だが読んで良かった。【第三回開高健ノンフィクション賞受賞作品】2021/08/09
ゆみねこ
80
知らなかったアフリカ。よそ者である著者の視線でアフリカ社会を語る1冊。日本でテレビや新聞で報道されるものを漫然と見ている私に強いインパクトを与えてくれました。2021/08/19
ちゃとら
54
【図書館本】読友さんのレビューが気になり読了。第3回開高健ノンフィクション賞受賞作。『ブラッド・ダイヤモンド』とか、ルワンダとかアフリカを舞台の映画は何本か観てきたが、やはり根深い物があるのだなと痛感しました。2021/08/21
つちのこ
34
本書が上梓されたのは2005年なので、著者が南アフリカで体験したアバルトヘイト撤廃後の混乱した世相が現在どうなっているのか気になった。調べてみると、失業率や犯罪率は変わらず貧富格差はさらに悪化しているようである。本書はかつて暗黒大陸と呼ばれたアフリカの負の側面を強調しながらも、多くの人々がアフリカに対して持つ「貧困」「援助」といった無知な先入観を改める必要性を説いている。その象徴ともいえるピュリッツアー賞の【ハゲワシと少女】の撮影裏話に、何も知らぬまま写真を見て衝撃を受けた無知な自分が滑稽に思えてきた。2021/10/23