内容説明
時は昭和九年。関東大震災から復興を遂げ華やかなモダン東京を謳歌したのも束の間、戦争の影が徐々に忍び寄っていた。ついに寅弥が我が子のようにいとおしんできた勲にも召集令状が届く。国の無体に抗おうと松蔵らが挑んだ企みとは?激動の時代へと呑みこまれていく有名無名の人々に安吉一家が手をさしのべる五編。人の痛みを、声なき声を、天下の侠盗たちが粋な手並みですくいとる。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。95年『地下鉄に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞、97年『鉄道員』で第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
116
日本人の気質の美しさ、上品さを支えていたものとして「やせ我慢」がある。これは本書の解説にすまけいさんが書いていらっしゃったことだ。日本人に限らず「かっこよさ」に繋がる基本態度は「やせ我慢」だといって良いだろう。というのは世界にあまたあるハードボイルド小説の主人公に共通する美質が「やせ我慢」だからだ。目細の安吉親分、振袖おこん、説教寅弥、黄不動の栄治、百面相の常、天切り松と登場人物全てがとびっきりカッコイイ。彼らは皆、一つの規範を持って生きている。それは金より、命より、筋目を通すことを大切にすることだ。2015/11/18
レアル
101
時代も昭和に入り、松蔵も一人前になっちゃった。「まだまだ続きそう」なんて思っていたら新刊が~♪「人間は畳の上で死ぬもんだ」良い言葉☆かっこいい登場人物に粋な生き方の「闇がたり」面白かった!2014/01/04
たいぱぱ
89
松が26歳(びっくりした!)になった昭和初期が舞台。歴史好きになって、明治維新が第二次世界大戦の悲劇を産み出したきっかけになったとよくわかるようになった。この作品はシリーズの中では異作とも言うべきもので、日本の良心とも言うべき「目細の安一家」を通して狂っていく陸軍の軍人たちを描いている。悲劇への大きな流れに呑み込まれた一個人の物語とも言えるのではないでしょうか。偶然だが、お盆の時期にぴったりの一冊となり色々考えさせられた。一家はもちろん、二ツ名「天切り松」の名付け親のあの人もカッコ良かったなー!2020/08/17
HIRO1970
66
⭐️⭐️⭐️1〜4巻余りに面白すぎて困りました。続編はあるのかな?これで終わりなのかな? 戦前の80〜90年位前の大正から昭和初期にかけての一時的に良い時の東京の姿、明治や江戸生まれの人々の気風の良さに胸が空きました。天切り松の江戸弁がまるで講談師の名セリフの様に粋でいなせなので良い音楽を聴いている時の様な心地良さを感じられました。浅田さんの凄さにますます魅了されました。沢山作品があるので何が出てくるか楽しみです。2014/12/13
ひらちゃん
65
話の中で、安吉親分一家も歳を重ね、松蔵もいっぱしの天切り松という二つ名を頂いて。なんでこんなにかっこいいんだろうね。みんな自分の為だけに盗っ人をしてるだけじゃないからさ。おひいさま嵯峨浩のワルツの話なんて鳥肌物だった。おこん姉御は女にしとくにゃもったいないよ。モボやモガが目に浮かんでしばし陶酔。時代が変わっても日本人の心意気は忘れたくないと思えるシリーズ。我が身を振り返るといたたまれないから余韻に浸っとこう。2018/04/12