出版社内容情報
俺の魂を殺した女。
彼女は一体何者なのか。
阪神淡路大震災の混乱の中、偶然出会った男と女。自らの野望を達成させるためなら手段を選ばない美しく冷徹な女と、彼女に心を奪われ、次つぎと悪事に手を染めていく男。やがて女の恐るべき真実の姿が浮かび上がり・・・。
あの『白夜行』の世界を彷彿とさせる傑作長編小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
923
『白夜行』の姉妹編。こちらが後で、5年後に書かれているが、作家があえてこれを書かなければならなかった真意がわからない。というのは、あらゆる点で『白夜行』の方が優れているからであり、本作には補完するものが何もないからである。あの作品の全編に横溢していた緊張感も、また彼ら二人が抱えていた圧倒的な喪失感と絶望感もここにはない。彼らの心理が説明的に語られ、その分通俗化してしまっているのであるから。この作品を単体で評価するなら十分に面白いとは思う。しかし、『白夜行』を読んだ後では薄く引き伸ばされたとの感が否めない。2020/03/03
Tetchy
888
読中様々な思いが去来した本書だが最後に至ってようやく理解できた。これは一人の女の生まれ変わりの物語なのだ。『白夜行』で書かれた19年の道行きに対し、本書の歩みはたった5年。それはつまり美女である唐沢雪穂でさえ、年には勝てなかったという暗喩になるのかもしれない。“花の命は短い”というが、生き急いだ新海美冬はそれを一番感じていたのではないか。三部作になるとも云われるこの稀代の悪女、雪穂=美冬の物語に最後引導を渡すのは加賀恭一郎かもしれない。もしそうだとしたら、東野さんのファンサービスの良さには正に脱帽だなぁ。2013/11/04
Kircheis
662
★★★★☆ 白夜行の系譜を受け継ぐ大作。 ひたすら上を目指すヒロインの新海美冬。 周囲の男を利用しのしあがっていく姿は正に悪女といえるだろう。 だが、その胸には彼女がただ一人心を許した男性がいた。その男性は既に死んでいた。 ある時、偶然ある男がその男性が過去にしたのと同じように助けてくれた。 だから美冬はその男を信じた。そして同じように利用した。 ラストは白夜行に比べて陳腐に感じるけど、もしかしたら白夜行のエンディングもこれと舞台裏は似た物だったかもしれないと想像してみる。2019/04/28
青葉麒麟
632
偽【新海美冬】は今迄一体どんな人生送って来たんだか(>_<) 頭良すぎも考えもん。2011/09/05
どんちん
480
白夜行の延長かどうか、それは、読む人の自由だ。いろいろな観点でいろいろな考えがあり、それを聞く(読む)ことはとても楽しい。主観的な意見もあれば、非常に客観的な、重箱の隅をつつくような点を積み重ねている人もいる。これほど多くの考えがあり、盛り上がるものはないのではと思えるくらいである。それだけ読者の心をつかんだという証ではないか。で、私の考え(感想)は、白夜行から直接つながる話ではなく、パラレルワールドの延長というである。なんとも都合のよい解釈であるが、そう感じてしまったのだからしょうがない(笑)2012/10/09