出版社内容情報
江戸の人材派遣業、口入屋の女主人となったお藤。商いは人で決まる──その信条を胸に、行き詰まった店を立て直すため、仲間と共に前代未聞の大勝負に打って出る。感動の長編時代小説。(解説/中江有里)
西條 奈加[サイジョウナカ]
著・文・その他
内容説明
江戸の人材派遣業、口入屋。縁あってその女主人となったお藤だったが、武家相手の商売は行き詰まっていた。店を立て直すため、お藤が打って出た一世一代の大勝負は、周囲の反発を呼び、江戸を揺るがす事態に発展。さらに、かつての命の恩人によく似た男と出会い、心は揺れ…。商いは人で決まる―揺るぎない信条を掲げ、己と仲間を信じて人生を切り開くお藤の姿が胸を打つ、長編時代小説。
著者等紹介
西條奈加[サイジョウナカ]
1964年北海道生まれ。2005年に『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しいたけ
118
ラストの切なさ、爽やかさ。「親の怠惰のつけを、どうして子が払わねばならないのか」。お藤の強さは真の強さ。人であること、女であること。商うということ、恋するということ。一本の幹に密度濃く詰まった物語。2018/12/12
ふじさん
95
口入屋「冬屋」の女主人となったお藤。自前で奉公人を仕込み、奉公先を商家へ転換する。この考えに手代頭たちは猛反発、更には江戸の人宿を束ねる「八部会」やお藤の命の恩人で実は中間頭「黒羽の百蔵」とも一時は敵対することになる。しかし、思いもよらない経緯で彼の子どもを産むことで人生が転機を迎える。お藤の口入屋に懸ける強い思いを具現化した独自の人材育成法が本書の面白さの一つであり、お藤の恋の行方も読みどころである。百蔵の波乱に満ちた人生と揺るぎな信念を持ち、己と仲間を信じて突き進むお藤の人生に心を揺さぶられる。2023/01/07
ぶち
92
西條奈加さんの小説はいつも面白い!なかなか軌道に乗らない口入屋を任された女性の物語。知恵と度胸でビジネスを切り開いていく様は痛快です。そこに、かつての命の恩人によく似た男との出会い。心が揺れていきます。命を懸けた商いと、運命の恋のゆくえに、胸が熱くなります。物語の語り口調はテンポよく、からりとしていて、じめっとした不快な湿気がありません。ドキドキする場面もたくさんあって、ページをめくる手が止まらずに一気読みでした。次世代に繋がる明るい希望を感じさせるラストシーン。上質な大人のラブストーリーでした。2023/11/21
papako
82
祖母のやっていた口入屋を江戸で始めたお藤さん。口入屋も儲けを出して、寄子(雇われる人)も、雇い入れるお店も八方うまくいく、新しいやり方を模索する。出る杭は打たれるけど、助けてくれる人たちもたくさん。口入稼業にお藤さんの恋?も絡めて、江戸のお仕事小説でした。口入屋の親店の増子屋のおかみさん、お品がいい感じでした。でも、他の西篠作品に比べると物足りないかな。ラスト生きてたんかい!と思ったし。ま、お幸せに。2021/05/08
優希
79
面白かったです。口入屋に縁あって店主となったお藤ですが、どうも行き詰まっていました。そこで一世一代の大勝負をかけるのが格好良かったです。周囲の反発で江戸を揺るがしてしまうのが凄い。それでも確固たる心情を抱えて人生を切り開いていくお藤に掘れずには入られませんでした。時代劇でよく聞く「口入屋」が何なのかもわかりました。2020/07/14