出版社内容情報
攘夷と開国の狭間で混乱を深める日本。鉄舟は最後の将軍・徳川慶喜の意向を受け、命がけで西郷隆盛と直談判、江戸無血開城への道を開いていく。のちに明治天皇に任用された男の清貧で志高い生き方。(解説/縄田一男)
内容説明
最後の将軍・徳川慶喜の意向を受けて官軍の陣を決死の覚悟で突破。西郷隆盛と談判し、江戸無血開城への素地をつくった。そして無私の人となりを見込まれ、侍従として明治天皇の教育係に任じられた。自らは地位や名誉や金銭を求めず、他人には思いやりをもって接し、雄々しく清々しく動乱の時代を生きぬいた山岡鉄舟。その志高き人生を通じ、現代日本人に生きることの意味を問いかける傑作歴史小説。
著者等紹介
山本兼一[ヤマモトケンイチ]
1956年京都市生まれ。同志社大学文学部美学専攻卒業後、出版社勤務を経てフリーライターとして活躍。99年「弾正の鷹」で小説NON短編時代小説賞、04年『火天の城』で第11回松本清張賞、09年『利休にたずねよ』で第140回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
118
幕末から明治を無私無欲に駆け抜けた山岡鉄舟の一代記。勝海舟や西郷隆盛らとともに、激動の時代を生きる。ただ生きるのではなく、剣に書に禅に、これだけやればもう思い残すこともあるまいと思えるほど、少しの妥協もなく全力で生きた。「なすべきことをなす。それはおのれのためであり、天下のためでもある」。最後の侍・鉄舟のまっすぐで一途な生きざまを、山本兼一の書で読めたことの喜びのうちに静かに書を閉じる。2019/09/15
ビブリッサ
105
下巻の方が数段面白い!約束します。山岡鉄舟と様々に関わる人物たちとの丁々発止。カッコイイ生き方に舌を巻く。侍とは何ぞや。極論「パワーゲームをする人々」である(異論を認めます)。剣術でも秀でていた鉄舟ですが、剣術のみでどうこうできる時期をとうに過ぎた時代。知的なパワーゲームを痛快に怜悧に頭脳で捌いたのが海舟なら、鉄舟は気風で相手を圧倒するパワーがある。豪傑なのだが粗野ではない、禅学を修め、日本の未来を考え一途に愛した男。ヘソから下のことを問わなければ、惚れちゃいそうな男です(異論は認めません)。2017/11/10
はたっぴ
95
何度読んでも面白い。江戸から明治への移行期に、徳川家の解体と武士の新たな仕事の斡旋に奔走する鉄舟。日本中を駆け回り、一体どれほどの揉め事を解消したのだろう。〝精神満腹ならば物事は必ず成就する〟この言葉を体現し、歴史に名を残す数々の人物と折衝しながら国造りに励む姿に惚れ惚れとする。果ては明治天皇の教育係としてお仕えし、死ぬまで続けた書・禅・鍛錬(剣)は鉄舟を最後の侍と言わしめた。昨夏、榎本武揚らの旧幕府決起(箱館戦争)について読んだが、真逆の立場で粛々と実務をこなす鉄舟や勝海舟の大局観に改めて感銘を受けた。2017/02/15
レアル
85
こちらは明治篇。鉄舟の「江戸城無血開城」の何となくの歴史を知っていても、こうやって読んで知ると、鉄舟の生き方が解決へと導いたのではないかと改めて感じてしまう。そして鉄舟の生き方に私自身も学ぶ部分も多かった。歴史小説が好きなせいかとても面白かった。上下巻で鉄舟を堪能できたのもこの本をご紹介頂いた読友さんのお陰。。2013/06/13
とん大西
74
「精神満腹」-懸命に生きてさえいれば、負けても這いつくばっても、なんの誉れがなくてもかまわない。負けは悪ではない。全力を尽くさないことが悪。故に全身全霊であたる。-維新混乱、慶喜を嗜め、西郷とわたりあってきた鉄舟の鋼のような境地。正におっしゃる通り。しびれます。やはり清く正しく美しく、鉄人にして哲人。鉄舟が命をかけた西郷との対談があってこその江戸城開城。鉄舟の懐の深さで抑えた士族の暴走。日本を背負い、侍として生を全うした鉄舟。その人生に深く心をうたれます。(いつか大河ドラマにしてくれんかな…。) 2018/02/11