出版社内容情報
ママを失ったぼくを、パパは一人で育てた。ここ、パリで──。フランスで子育てをする著者が紡ぐ、家族と愛を巡る運命の物語。
内容説明
パリで生まれ育った「ぼく」は、ママを事故で亡くして以来、この街でパパと二人きりで生きてきた。だが、七十歳を過ぎたパパに、健忘症の症状が出始める。彼が迷子になるたびに、仕事中であろうと、真夜中だろうと、街を駆けずり回ることに。一方で、結婚を迫ってくる恋人との関係にも頭を悩ませていた。実はぼくらの始まりには、両親の過去が深く関わっていて―。家族と愛を巡る運命の物語。
著者等紹介
辻仁成[ツジヒトナリ]
東京都生まれ。1989年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞。以後、作家・詩人・ミュージシャン・映画監督と、幅広いジャンルで活躍。97年『海峡の光』で芥川賞、99年『白仏』のフランス語翻訳版「Le Bouddha blanc」でフランスのフェミナ賞・外国小説賞を日本人として初めて受賞。現在は拠点をフランスに置き、創作活動に取り組んでいる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふじさん
86
パリで生まれ育った僕は、ママを交通事故で亡くして以来、この街でパパと二人きりで生きてきた。70歳を過ぎたパパに健忘症の症状が出始め、僕は街中を駆けまわることになる。結婚を意識した恋人とは恋人同士の両親の複雑な過去が深く関わっていて、悩みの種となる。力みや気負いを感じない、素直で穏やかな語りとパリ在住する作家ならではの細部まで愛情を込めて書かれたパリの街の描写が心地いい。以前にテレビで見た、パリに在住する、辻仁成の親子の姿が投影されているようで微笑ましい。 2021/09/19
niisun
33
辻仁成さんの作品を読むのは3作目。最初に読んだのは10代の頃、デビュー作の『ピアニシモ』。次に読んだのは20代に、江國香織さんとの共作『冷静と情熱のあいだ』。別に嫌いなわけではまったくないのですが、あまり触手が伸びず、あれから20年。久しぶりに読みましたが、良いですね♪ フランスでの息子“十斗くん”との生活体験が色濃く反映されて作品なので、まちの情景、父子のやり取りが細やかに描かれています。息子目線で話が進みますが、“父”のタイトル通り、物語終盤に父の口から語られる想いがいちばん印象に残りましたね♪2021/10/08
ちろ
27
パリに暮らす父子の物語。辻仁成さん初読みでしたが、とても読み心地がよく好きな文章。フランス在住の外国人の暮らしぶりや立場に関心を抱いた。「人生は過酷なのが当たり前。みんな孤独だけど負けないで相応しい幸せを掴めばいい」っていい。年老いていく親をみるのは切ないが、寄り添い折り合いをつければお互いに居心地よく暮らせるように思えた。2020/08/13
introduction
9
Twitterで目にする辻さんの文章と所々重なる。自分がシングルファーザーであること、充路の父がシングルファーザーであること。料理好き。今辻さんは息子さんとの関係で悩まれているようだ。思い出して再読。頑張って欲しい。2021/08/06
su☆ma
7
★3(図) 海外移住するとか自分の人生では全く想像出来ないから、イメージは解説で書かれていたように憧れや羨望がほとんどを占める。しかし、あらゆる国からの移住者が集まる国では親子でさえも言葉の壁があるのかと気付かされた。日本から移り住んだ父は生活していくための日常会話に苦労し、その国で生まれた息子は両親が日本人でも難しい漢字は読めない。ジュールの恋人の母とジュールの父が漢字で筆談の花が咲くというのは彼らの背景を思えばとても皮肉だ。妻・母を早くに喪った父子の物語。2020/11/25
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