集英社新書
勘定奉行荻原重秀の生涯―新井白石が嫉妬した天才経済官僚

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  • サイズ 新書判/ページ数 249p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784087203851
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0221

内容説明

膨大な著述を残した新井白石によって、一方的に歴史の悪役に貶められた勘定奉行・荻原重秀。五代将軍綱吉時代後半の幕府財政をほぼ掌中にし辣腕をふるった。マイナスイメージで伝えられる元禄の貨幣改鋳だが、物価上昇は年率三%弱にすぎず、それも冷害の影響が大きい。金銀改鋳以外にも、各種検地、代官査察、佐渡鉱山開発、長崎会所設置、地方直し、東大寺大仏殿建立、火山災害賦課金など、実に多彩な業績を残している。本書は、金属貨幣の限界にいち早く気づいた荻原重秀の先駆的な貨幣観に着目しつつ、悪化の一途をたどる幕府財政の建て直しに苦闘し、最後は謎の死を遂げるまでの生涯を描く。

目次

序章 評価分かれる荻原重秀
第1章 新規召出―出生、家族、幕吏への登用(十七歳)
第2章 延宝検地―「検地条目」の新規立案、新方式の検地で頭角を顕す(二十二歳)
第3章 代官粛正―わずか三ヶ月の会計調査で、勘定奉行を総退陣に追い込む(三十歳)
第4章 佐渡渡海―大規模排水工事で、佐渡に「近江守様時代」をもたらす(三十四歳)
第5章 金銀改鋳―「貨幣は国家が造るもの、たとえ瓦礫であっても行うべし」(三十八歳)
第6章 長崎会所―銅の輸出で、運上金と金銀流出阻止の一石二鳥を狙う(四十二歳)
第7章 増収模索―元禄の地方直し、東大寺大仏殿再建、富士山宝永大噴火(五十歳)
第8章 解任失脚―緊急避難の銀再改鋳、新井白石による弾劾、御役御免(五十五歳)
第9章 〓(ゆう)下断食―荻原重秀の死因は本当に自殺だったのか?(五十六歳)
終章 荻原重秀死去後のこと

著者等紹介

村井淳志[ムライアツシ]
1958年生まれ。名古屋市出身。東京都立大学大学院博士課程(教育学)単位取得退学。金沢大学教育学部教授。専門は歴史教育・社会科教育論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Y2K☮

42
著者入魂の一冊。まず参考文献の多さ。史料が乏しい中でよくぞここまで。そして勝者が記す歴史で「貨幣を改悪してインフレを招き、私腹を肥やした小悪党」という人物像を一方的に押し付けられた荻原重秀の業績をフェアに評価して欲しいという熱意に感服した。情を挟まずに必要な改革を次々に実行した重秀は有能過ぎた故に敵も多かったのだろう。対立した新井白石は後の松平定信と同様、清濁併せ呑む事ができない頭でっかちの理想主義者と映った。経済はどこまでも現実主義。綺麗事や精神論で腹は膨れない。図書館で借りたけど書店にあったら買おう。2017/07/15

kawa

33
欧米に先駆けること200年、金本位制ではなく為政者の信用に基づく貨幣国定説による名目貨幣政策を推進した幕府官僚・荻原重秀の軌跡を追う刺激的評伝。彼を目の敵にした新井白石、「仁・義・礼・智・信」を基本とする儒者にとって、貨幣の価値を意図的に誤魔化す如き所業は許せない悪行と見たことも良く解る。そんな善悪論で解決できない世の仕組みの奥の深さを知れることも歴史を学ぶ功徳なのだろう。ないものねだりだが、何故、彼がそのような政策を選択したのかを知りたいところ。(新田次郎著「怒る富士」を読んで荻原を知りこちらに)2023/05/21

山口透析鉄

29
市の図書館本で一気に読了。 非常に興味深い本でした。江戸時代の経済政策・通貨政策・財政等について、時代を先取りした政策を打ち出した官僚の一代記です。 世界初の先物市場が大阪(当時は大坂)にあった日本のことですので、こういう経済政策が残っていたら、歴史、かなり変わっていたのでしょうが、当時では評価できる人もいなかったのでしょうかね。 やはり江戸時代に諸々の近代的な施策が事前準備され、それ相応の教育水準が浸透していなければ急速な近代化など無理だったでしょうし。 著者の他の本も読みたいですね。オススメです。2023/04/22

Y2K☮

26
政府に信用さえあれば、貨幣に高価な素材を使う必要はない。実物貨幣から名目貨幣への転換は欧米よりずっと早い。素晴らしい先見性だし、後世が騒ぐほどのインフレも起こしていない。財源がないなら増税するのではなくカネを刷れという意見に対してハイパーインフレを危ぶむ反論を目にするが、やり方次第だろう。だぶついて危険水位に近づいたら増税すればいい。合理的で怜悧なワンマン官僚ゆえ敵が多いのはやむなし。ただ新井白石が重秀に向けた批判は妄念と誹謗中傷で論になっていない。両者が主役の大河ドラマを見たい。庶民はどちらを支持する?2023/12/11

スプリント

13
新井白石から執拗に攻撃を受けた勘定奉行荻原重秀の功績を見直した本です。金山の復活や貨幣改鋳など財政建て直しに奮闘した実績が紹介されています。著書を残していないので後世の評価が不当に貶められてしまった印象を受けました。2016/04/30

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