集英社新書
人はなぜ憎しみを抱くのか

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  • サイズ 新書判/ページ数 221p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784087202823
  • NDC分類 141.6
  • Cコード C0211

内容説明

人間の抱く感情のなかで、もっとも激しく破壊的なのは「憎しみ」の気持ちだろう。この感情はどこから来るのか―広い視野と鋭い洞察力をもって生涯この問題と取り組んできたアルノ・グリューンは、その根源を子ども時代の親との関係に見いだす。親の愛情に全面的に依存して生きるしかない幼い子どもは、親が無意識に求める要求にたいし、本来の自分を排除してでも応えようとする。こうして失われた自分自身との関係を、誰もが一生の課題として抱えて生きている。本書は、グリューンがインタビューに答える形で、こうした根源的な人間関係に正面から光をあて、そこから現代社会の問題を、平易に解き明かす。

目次

第1章 自分にたいする裏切り―憎しみとテロの根源
第2章 「ねじ曲げられた」現実―本来の自分に代わる見せかけ
第3章 なぜ真の愛情は耐えがたいのか―身近さと温もりを追い求める、満たされない気持ち
第4章 本来の自分にたいする憧れ―失われた「自分の中の他人」を探して
第5章 もうひとりの自分―東部ドイツの極右過激派
第6章 服従―権力への順応
第7章 責任を引き受ける―罪と罪悪感は異なる
第8章 生き方は自分で決める―「負け組」で幸せに生きる
第9章 憎しみから逃れる道―人間らしく生きるための勇気
第10章 人間にたいする情熱―生涯のテーマ

著者等紹介

グリューン,アルノ[グリューン,アルノ][Gr¨un,Arno]
1923年ベルリン生まれ。精神分析学者。1936年、ナチの迫害を逃れて家族とともにアメリカに亡命。ニュージャージー州ラトガース大学で教える。著作多数。ヨーロッパ各地で今もなお精力的に講演活動を続けている。スイスのチューリヒ在住

上田浩二[ウエダコウジ]
1947年生まれ。東京大学卒業、大学院修士課程修了。ベルリン、ウィーンに留学。早稲田大学教授、筑波大学教授を経て、ベルリン日独センター副所長。ベルリン在住

渡辺真理[ワタナベマリ]
上智大学文学部史学科卒業。ドイツ語会議通訳・翻訳家。NHKテレビや民放をはじめ、第一線で活躍中
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

tomagla

5
育ち盛りの子供がいて、コロナが蔓延しているタイミングで読んだこともあり、身につまされる内容だった。子供は親の行動の裏に隠された弱さを感じ取りながらも、親が「自分はこうだ」と見せたがっている姿を受け入れるしかない。この体験のせいで、成人してからも本当の感情を表現する人がいると、不安を覚え、受け入れられなくなる。社会に大きな変化が生じてくると、かつての犠牲者、自らに向けられた昔からの憎しみ、すなわち「自分の中の他人」にたいする憎しみが、自分の外にある見知らぬもののすべてに向けられる。2020/05/06

きくえ

2
子どもは親から大事にされると親切になるし、大事にされないと傷つけたり憎しみをもった行動をとる。って最近読んでる日本の育児書と同じ考え方の本、なんだけど、作者がドイツの人なのでナチスの話がとても多い。そして例としてでてくるドイツの子育ては虐待って意味じゃなくて躾の考え方が厳しいな、と思ったり。って、この本は育児書ではないけど。2012/06/07

いたち野郎

1
これはすごいね。ヤフコメの人たちが、どうしてやたらと「自分をまともに育ててくれた親に感謝。」しているのか分からなかったけど、この内容は大いに関係があるのかもしれない。最近のTwitterとか、ようつべのコメントとか、怖いなあ。どうしてああなんだろうなあ。ということに興味があると、これは面白く読めるのではないでしょうか。ちょっと内容が難しいですが。当然、自分のことも省みなければいけないね。だが、ルーズベルト大統領は褒めちぎるような人ではないんじゃないかな。公文書によると諸外国に対してかなり冷酷よね。2020/09/06

よぞ

1
インタビュー形式で文章も平易だが、内容を理解するのは難しい。人が憎しみを抱く原因が親や学校から受ける一般的な教育そのものに内在されているからだ。そして成功している人ほど疑問を抱かず問題が盲点になるのであれば、社会の枠組みの中で解決していくことはほとんど不可能だろう。本書で言われているように負け組でいいので狂ったゲームからは距離をおいて自分らしく生きることぐらいしかできることはない。そういう人間が一人でも多くなればそれは希望になるかもしれない。2019/01/07

スタビライザー

1
人が憎しみを抱くのは、「自分の中の他人」が主な元凶。そいつが憎しみの原因となる。高圧的で抑圧的な親子関係や学校での教師との関係、もしくは上司との関係でも生じる。ただ、幼年期の親の接し方に問題があると発声しやすいことには変わりが無い。彼らは、子どもにも自分たちと同じように考え感じ、痛みを知る存在だということをどこかで失念しているのかもしれない。子どもの存在を通して、自分と対面するのが怖いのもあるが。いずれにせよ、自分を救えない者は誰も救えないという言葉の意味が分かった気がした。2010/02/15

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