集英社新書
樋口一葉「いやだ!」と云ふ

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  • サイズ 新書判/ページ数 206p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784087202496
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0295

内容説明

二十四年の短い生涯に、近代文学に燦然と輝く名作を残して逝った樋口一葉。その象徴性に満ちた文学は、江戸から明治、古典から近代文学へという時代に生まれ、そのどちらをも超えた魅力をはなち、現代に読みつがれている。本書では、代表的五作品『大つごもり』『たけくらべ』『にごりえ』『十三夜』『わかれ道』をあらゆる角度から読みこむ。遊廓吉原のにぎわい、西鶴など、江戸から当てた光はまったく新たな世界を浮かびあがらせ、登場人物たちの心情への鋭い考察は、“人間・一葉”の真実に迫る。「いやだ!」といいながら、困難な時代に立ち向かった一葉の魂のメッセージを伝える著者渾身の評伝。

目次

序 花と布
1 享楽の吉原―『たけくらべ』
2 盆十六日のひとだま―『にごりえ』
3 師走みそかの訣別―『わかれ道』
4 大晦日はあはぬ算用―『大つごもり』
5 十三夜の月から見る―『十三夜』

著者等紹介

田中優子[タナカユウコ]
1952年横浜生まれ。法政大学大学院博士課程修了。同大学社会学部教授(近世文学)。『江戸の想像力―18世紀のメディアと表徴』(ちくま学芸文庫)で芸術選奨文部大臣新人賞受賞。『江戸百夢―近世図像学の楽しみ』(朝日新聞社)で芸術選奨文部科学大臣賞、サントリー学芸賞受賞
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

49
一葉というひとは、明治期に生きたからこそ作品の数々を書けたのだろう。江戸と地続きのこの時代の特殊性、変化していく価値観が存在したからこその作家だったのだろう。2016/08/13

detu

23
たけくらべ、大つごもりしか読んでいないし、殆ど分からなかった。それが証拠に内容もあやふや。でもなぜか気になる樋口一葉、と言うか明治大正の女性に興味がわくのかも。優子さん、政治学者かと思っていたら文学者でした。本書、実に奥深く改めて一葉に興味抱かせる。作品の悉くに「嫌だ、厭だ」が出てくると。ここに一葉の生活と時代背景を思わなければならないと。確かに時代は維新から二十年余ほどしか過ぎていない。今の時代とは大違いだし。優子先生ならではの考察は面白いと思った。これを踏まえた上で改めて一葉を読んでみたいと思う。 2021/01/28

きいち

7
「江戸の想像力」の田中優子が、一人の生き抜く人として自分自身を重ね合わせて一葉の作品と生き様を辿ってくれる。妻でも母でも妾でも教師でもなくただ逃げずに立ち向かった一葉がただただ魅力的。考えてみたら大人になってからちゃんと読んだことがない。古文は苦手だけれど、とにかく読んでみなければ。・・・それにしても、こんなに金に困ってた一葉がお札になるとは、なんて皮肉な。2012/02/16

るうるう

3
樋口一葉の作品はまだ読んだことがない。だが、女流文学者の草分けなのでその人生には一定の関心があった。本書は代表作を解説しながら、一葉の意外な一面を紹介していく。面白いのは、結婚もイヤ、富や地位にも興味がない、養わねばならない家族さえいなければ漂白の歌人になってのたれ死にたい、と言っていることで、これはぜひ日記も読まねばなるまい。一葉の母親はいまでいう毒母で、妹も依存的。一葉自身も周囲の人間から金を無心して生活し、返す気もないようだ。お札の顔としては不適格のようにも(そういや野口も・・・)。2017/08/01

Gen Kato

3
「今日でもなお、師弟関係を『男女関係』としてしか理解せず、そのような噂を流す人々がたくさんいる。このような人々は、戦前までの価値観や感性しか持ち合わせないか、あるいは、自分自身が常に、異性を性の対象としてしか見てないかどちらかだ」……ここ、「仕事上の関係」も含めて、本当にそうですね。そういう鬱陶しい人たち、男女を問わずいます。続く作者の言葉が痛烈。「他人の性の話が、自分の貧しい性の感覚を突き動かし、一時的にせよ活性化するからかもしれない。これはポルノや春本の機能と同じである」。2015/06/29

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