内容説明
独身で建築家の、ちょっと風変わりなぼくのおじ―カズおじさんが、ある日、黒くて不格好なラジオをくれた。大きなダイヤルと立派なアンテナがついた年代物のやつだ。すっかり夢中になってダイヤルをいじっていると…不思議な物語が聞こえはじめたんだ。妖怪ラジオから流れる珠玉の連作メルヘン・ファンタジー。『理想宮―K氏の一日―』を新たに加え、貴方の琴線に夢を送信する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
静間
5
不思議な短編集。中学生の「ぼく」の日常と、おじさんにもらったラジオの流す海賊放送の幻想的なお話。花の代わりに鈴をつけた梅の木のお話。自惚れ屋の妖精の恋物語。世界一幸福で幸運な豆のお話。等々。ラジオのお話はファンタジックで美しく、挿絵も手が込んでいて楽しい。そして生活感のある「ぼく」の日常。不思議なところなんてない日常なのに絶妙にラジオのお話とリンクする。現実と幻想、短いお話なのに緩急があって面白い。図書館で読んだ後、絶版になっていたので古本屋を探しまわった本。読んだ後満足のため息が出てしまう本。2012/12/17
poepoekurenai
2
不思議なラジオから聞こえてくる、少し不思議なお話達。 物語調ですが、随所随所に樹川先生らしさが出ています。可愛らしいイラストや凝った装丁も物語のなかに引き込んでくれる素晴らしいものになっています。 特に、K氏の日常が好きです。
なおき
2
短編童話が好きな方には是非ともお薦めしたい一冊。お薦めというかむしろ、レジに向かうお客さんの、抱えた本の上に置いてしまいたい。きっと許してもらえるもん。 だがしかし、この本は絶版らしいのです。今のコバルト向きじゃないかな、とも思う。でもこれ、オレンジだったらどんぴしゃですよ、集英社さん…!なんならメディアワークスでもいい(KADOKAWAさーん!)。再版求む!!
鬣
1
めちゃくちゃ好き。夜な夜なラジオから流れてくる不思議で美しい物語と、それを聴いている少年の日常が交互に描かれている連作短編集。宝物のように大事な本です。
はるかかなた
1
夜、ラジオで物語を聞くことには、独特の空気がある。しんとした、どこか世界に一人のようなあの気持ち。一遍三十ページほどの短編が詰まったこの本には、その空気がそのまま閉じ込められていて、読んでいる間ずっとラジオを聴いているような気持ちになった。どのお話も上質なおとぎ話の様な味わいの、すてきな一冊。イラストもぴったりです。2016/05/10