内容説明
「源氏」への尽きせぬ愛をこめて最後の「円地源氏」ここに完結!誠実な薫、情熱の匂宮。宇治を舞台に描き出す、苦しい恋の綾織模様。
感想・レビュー
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森の三時
40
源氏物語の現代語訳で高名な円地文子さんの手による宇治十帖を1冊にまとめたものです。源氏亡き後の2大貴公子である薫と匂宮と宇治の姫君たちの恋物語。情熱的で強引に手に入れようとする匂宮と、善意を押し付け、姫君たちの意思を尊重しているようでいて同意を待つだけの煮えきらない、こじらせ男の薫。紫式部は、第三部の宇治十帖で、かっさらう勇気のない薫の方を主人公にした、最後のヒロインの浮舟に寄る辺のない漂うような人生を与えて終えた。作者の心境の変化を感じ、高級貴族に何を伝えようとしたのか、そんな思いを持ちました。2023/03/18