出版社内容情報
『隠蔽捜査』の著者・今野敏、初の幕末小説!激動のさなか、ただ一点を見据えて正道を進む幕臣がいた。これまで誰も描かなかった、もう一つの近現代史がここにある。
内容説明
安政7(1860)年、咸臨丸が浦賀港からサンフランシスコを目指して出航した。太平洋の長い航海では船室から一向に出てこようとしない艦長・勝海舟を尻目に、アメリカ人相手に互角の算術・測量術を披露。さらに、着港後、逗留中のアメリカでは、放埒な福沢諭吉を窘めながら、日本の行く末を静かに見据える男の名は、小野友五郎。男は帰国後の動乱の中で公儀、そして日本の取るべき正しい針路を測り、奔走することになる―。知られざる幕末の英雄の物語!
著者等紹介
今野敏[コンノビン]
1955年北海道三笠市生まれ。上智大学在学中の1978年「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞受賞。卒業後、レコード会社勤務を経て作家業に専念する。2006年『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞、2008年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、2017年「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞する。2018年、作家生活四十周年を迎えた。「空手道今野塾」を主宰し、空手、棒術を指導(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
265
今野 敏は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者初の歴史小説、幕末から明治維新に活躍した天才 小野 友五郎の物語、テーマが新鮮で清々しさを感じました。著者には、これからも歴史小説を書いて欲しいと思います。2021/01/29
旅するランナー
262
咸臨丸の測量方兼運用方、小野友五郎の半生。二度の訪米、国産蒸気船建造、異国船防備のための江戸湾測量、貨幣換算問題解決、幕府軍の戦略立案、横須賀造船所建設など、本当に多岐にわたる活躍で近代日本の礎を築いた偉人なんですね。存じ上げませんでした。「複雑に見えるものを、できるだけ簡単にすること」をポリシーに、スパッスパッと業務をこなしていくため、小説自体もトントン拍子で進んでいきます。ジョン万次郎がイイ人で、勝海舟と福沢諭吉が変な奴に描かれているのも面白い。幕府側から見た明治維新ですね。2021/03/20
初美マリン
137
やるべきことをする、主人公、それを見極めひたすら実行する。すごい。この作品を読むと口の上手い人は信用できないと思ってしまう。歴史小説は、歴史を違う側面からみることができる読者のよいところです。2021/05/15
trazom
129
小野友五郎を主人公とするこの小説は、友五郎が測量方として咸臨丸に乗り込むところから始まる。明治維新の勝者が綴る歴史では不当な扱いを受けているが、改めて、咸臨丸の木村摂津守、中浜万次郎や、小栗上野介など、幕末の幕臣たちの人格的な立派さに心を打たれる。それと対比して、福澤諭吉や勝海舟の卑しさが強調して描かれているが、私には極めて納得感のある描写である。時代の波に乗って上手く立ち回った人たちの陰で、小野友五郎のように、愚直に誠実に生きた人の凛とした生き様にスポットライトを当ててくれた著者に、拍手を送りたい。2021/04/15
ガチャ
112
咸臨丸に乗ってアメリカに渡った、測量方兼運用方の小野友五郎は、アメリカの造船技術を学び、 お国のために奮闘する生涯! 世界に目を向けて、日本の行く末をこんなに考えてくれていた人たちがいたとは。 友五郎の進むべき道をただ行くだけという姿勢がかっこよかったな。福沢諭吉や勝海舟、坂本龍馬が出てきたけど、イメージとは違う。こんなに厄介な人物だったのか。見方を変えれば、別の真実が生まれる。 歴史に乏しい私にもわかりやすく読み進められました。2021/04/01