出版社内容情報
奇跡のように美しいこの島には、悲しみと嘆き、そして希望が満ちていた――。『世界の果てのこどもたち』の著者、最新作登場。沖永良部島――沖縄のすぐそばにある小さな島は、大戦末期、米軍機による激しい攻撃を受けた。戦況が厳しくなっていくなか、島のこどもたちは戦争を肌で感じつつも、いきいきと過ごしていた。そんなある日、島に特攻機が不時着するという事件が起きる。
中脇 初枝[ナカワキ ハツエ]
著・文・その他
内容説明
沖永良部島―沖縄のすぐそばにある小さな島は、大戦末期、米軍機による激しい攻撃を受けた。戦況が厳しくなっていくなか、島のこどもたちは戦争を肌で感じつつも、いきいきと過ごしていた。そんなある日、島に特攻機が不時着するという事件が起きる。
著者等紹介
中脇初枝[ナカワキハツエ]
1974年徳島県生まれ、高知県育ち。高校在学中に『魚のように』で第2回坊っちゃん文学賞を受賞し、17歳でデビュー。筑波大学で民俗学を学ぶ。2012年『きみはいい子』で第28回坪田譲治文学賞を受賞、第1回静岡書店大賞第1位、第10回本屋大賞第4位。2014年『わたしをみつけて』で第27回山本周五郎賞候補。2016年『世界の果てのこどもたち』で第37回吉川英治文学新人賞候補、第13回本屋大賞第3位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
238
中脇 初枝は、新作中心に読んでいる作家です。沖永良部島の物語は、初めてです。軍神のインフレの社会は、不幸以外の何物でもありません。安倍総理にも読ませたい佳作です。姉妹作の『神の島のうた』も読んでみたいと思います。2018/07/26
ちゃちゃ
132
薩摩半島の南西、沖縄に近い「えらぶ(沖永良部島)」。ラジオも新聞もない、電気も通っていない、この小さく貧しい島にもかつて激しい戦があった。けれど、ヤマトゥ(本土)にはない美しい自然と人を思いやる優しく温かい心がある。空襲や機銃掃射が続く中、最後まで意識のない兄を見捨てず、ウム(芋)を盗む隣人を許す心が。中脇さんの筆遣いが素晴らしい。子どもの目を通した戦争。マチジョーの叶わぬ淡い恋。理不尽な運命。切なくて苦しくて涙が滲む。「ちばりよ牛よ ふぃよーふぃよー」子どもたちの未来に幸あれと祈らずにはいられない。2018/08/29
なゆ
122
これもまた、読むべき一冊。太平洋戦争末期、沖縄のすぐ近くの沖永良部島では何があったのか。島の人達の、物資がないどころかラジオも新聞もないため情報もなく、砂糖小屋に避難して暮らす、戦争という日常。ひたひたとアメリカ軍上陸の日が迫る緊迫感も、島の少年マチジョーの視点と島の言葉ののんびりした感じでソフトに感じられる。貧しくてももっと苦しい人を追い詰めたりしない優しさと、泣く子をおぶったカミとマチジョーを防空壕から追い出す冷酷さ。特攻隊の志願の話。白いユリが咲く小さな穏やかな島にも、戦争の理不尽さは容赦なかった。2019/02/02
美登利
118
毎年8月が近くなると戦争に関する書物が多く出版される。ご自身が戦争を経験された方はもう少なく両親でさえ戦後生まれの方が多いのかもしれない。中脇さんは私よりも10歳若い。この沖永良部島の戦中戦後を生きている少年の物語は、ライフワークとされている民話昔話の研究から生まれたものなのだろう。その地を知らずともその方言が分かりにくくとも深く心に染み入る物語だった。働き盛りの父親や長男は戦争に取られ、年寄りと女子供ばかりが残った島で多感な少年時代を送る彼の願いが、どうかこれからも続きますように。2018/08/01
修一郎
112
戦況激しい沖縄の隣島,沖永良部島に暮らす子供たちの眼から見た戦争が描かれる。米もめったに食べられない貧しい島だけれども,戦争がなければ幸せに暮らしていたに違いない子供たちの日常と,「神」となってしまった特攻兵たちの真の姿が対比的に描かれて見事だ。満州での過酷な運命を生き延びた少女たちを描いた「世界のはての子供たち」にも心揺さぶられた。戦地そのもの以外であったに違いないの戦争の姿をきちんと拾い集めて物語として残してくれる中脇さんの気持ちにも感動した。素晴らしい作品だ。 2018/08/19