出版社内容情報
意識が生まれるとはどういう事態か。身体・情動から感情がいかに作られ、その認識に意識はどう働くのか。神経学者の刺激的な仮説。ダマシオは1990年代から、2000年代2010年代と、神経科学を基盤として身体、脳、心に関する刺激的な著作をつぎつぎに発表し、哲学者たちの問題設定に大きな影響を与える一方、世界中に非常に多くの読者を持つ科学者。
ダマシオの考え方の基本は、心も、情動や感情も、意識も自己も、進化のなかで生存に有利だから発達してきたということで、彼がまず重視するのは「身体」。
ダマシオはfeeling(感情)といいemotion(情動)と言いますが、その言葉によって彼が意味するところは一般的・常識的な会話のなかでの意味と微妙にズレているようです。ダマシオの言う「情動」とは、動物や人間のような有機体が何かを見る、聞く、触る、想像するなどしたとき、なにがしかの心の評価的プロセスが起こり、それが、同時にもたらされた身体的反応と組み合わされたもの。
一方、こうした情動的身体状態は神経信号や化学信号によって有機体の脳に報告され、脳の中で神経的に表される。これが「感情」。しかし、表象が脳の中に形成されること、すなわち有機体が感情を持つことと、有機体が「感情を感じること」とは違うというのがダマシオの議論の重要なポイントです。
生存のために働いているのが情動ですが、情動は意識されることなく、いわば自律的に働いています。暑いときに汗を流すのが情動の役割だとすれば、もっと涼しいところへ移動するという行為を取らせるための仕組みがfeeling感情だというのがダマシオの言葉の意味するところです。
そして、その「感情を感じること」「感情を認識すること」のために決定的な役割を果たすのが「意識」であるというのがダマシオの議論の構造となります。
本書は、身体的変化と情動から感情が生まれ、感情の表象が自己を表象するきっかけとして、「意識」が働き始め、心というものが信じられるようになるという一つのストーリーを、神経科学の立場から。本書は『無意識の脳 自己意識の脳』(講談社刊 2003年)を原本とし、文庫化にあたり改題しました。
第一章 光の中に足を踏み入れる
第二章 情動と感情
第三章 中核意識
第四章 なんとなく推測される気配
第五章 有機体と対象
第六章 中核意識の形成
第七章 拡張意識
第八章 意識の神経学
第九章 感情を感じる
第一〇章 意識を使う
第一一章 光のもとで
アントニオ・ダマシオ[アントニオ ダマシオ]
著・文・その他
田中 三彦[タナカ ミツヒコ]
翻訳
内容説明
何かを見る、聞く、触るなどによって身体的変化が生じ、情動を誘発する。この身体状態は脳内で神経的に表象され感情の基層となる。では、感情はどのようにして「私」のものと認識されるのか。意識はそのときどのように立ち上がりどう働くのか。ソマティック・マーカー仮説、情動と感情の理論で著名な神経学者が取り組む「感情の認識」という問題。
目次
第1部 本題に入る前に(光の中に足を踏み入れる)
第2部 感情と認識(情動と感情;中核意識;なんとなく推測される気配)
第3部 認識の生物学(有機体と対象;中核意識の生成;拡張意識;意識の神経学)
第4部 認識せねばならない(感情を感じる;意識を使う;光のもとで)
著者等紹介
ダマシオ,アントニオ[ダマシオ,アントニオ] [Damasio,Antonio]
1944年生まれ。アメリカの神経学者、精神科医。現代神経科学の第一人者。『デカルトの誤り』でソマティック・マーカー仮説を提唱
田中三彦[タナカミツヒコ]
1943年生まれ。東京工業大学卒業。科学評論家、翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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