出版社内容情報
敏腕ディレクターの門前市郎(もんぜん・いちろう)がスカウトした新人歌手・小百合(さゆり)チエには、ある驚くべき秘密があった。その秘密を利用して彼女を売り出し、芸能界に君臨すべく策謀をめぐらせる門前。そして漫画家アシスタントの山辺音彦(やまべ・おとひこ)が生み出す妄想世界「ジレッタ」の恐るべき威力とは? 異色極まるSFドラマ! <手塚治虫漫画全集収録巻数>手塚治虫漫画全集MT171~172『上を下へのジレッタ』第1~2巻 <初出掲載>1968年8月14日号~1969年9月10日号 漫画サンデー連載
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
73
発想自体は単純だがそれを壮大なスケールに仕上げる手腕が冴える作品。1968~1969年にすでに仮想現実の世界を作り上げている点が凄い。2021/03/28
MICK KICHI
63
講談社ビジュアル版の解説は筒井康隆先生。筒井によれば、手塚先生が目指したものが、マンガ独自の表現による頂点。夢・妄想のイメージのWeb化を先駆したテーマは、自作の「パプリカ」に影響を与えかもしれないとしている。ダークじゃないブラックな手塚が全面に出て、そう言う意味では暗さはない。エロと金と権力と名誉、女性蔑視極まりないキャラとストーリー展開。現代では作品化は到底無理と思うが、時代背景を知らずにこの作品は受け入れられないだろう。2017年に舞台化。観たかった。2020/05/16
sachi
19
舞台を観た友人からのすすめで読んでみました。うーん…正直、よく分からない。ジレッタの妄想世界も無茶苦茶。これの舞台てどんなだったんだろう。気になる。2017/08/24
アーチャー
5
生前の手塚治虫氏は〝漫画を描く上で大切なのは風刺性だ〟ということをよく語っておられましたが、本作は人間の醜い部分である欲望を軽いタッチで描きながらも、その欲望の果てに降りかかるラストまで、手塚作品らしい風刺に満ちた仕上がりが面白かったです。2012/05/01
KDS
3
この「上を下へのジレッタ」も今回初読みとなる手塚作品。大人向け雑誌に連載されていたもので、「人間ども集まれ!」や「フースケ」同様少年マンガとは異なる風刺画のようなタッチの絵柄が特徴的。「ジレッタ」というのはこの作品に出てくる山辺音彦という人物が身につけた、彼自身の妄想を電波に変え、他人に仮想現実を体験させるという超能力の名称。映画「マトリックス」のバーチャルリアリティのようなもの…と言えば分かりやすいかも。1968年の作品なので「マトリックス」を遥かに先駆けていたということになる。手塚治虫はやっぱり凄い。2022/11/07