出版社内容情報
呪われた出生を背負う少女を描いた問題作! 地方の豪農での権力争いに巻き込まれ、4歳で土蔵に幽閉された奇子(あやこ)。彼女が大人の女に成長したとき、周辺の歯車が狂いだす……。陰を描く裏・手塚漫画の決定版! <手塚治虫漫画全集収録巻数>手塚治虫漫画全集MT197~198『奇子』第1~2巻収録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
220
まずタイトルでこれであやこと読むのかぁ。しかし戦後の闇を見た感じがした。これを手塚治虫が描いたというのがまた驚く。2017/01/25
gtn
19
戦後の農地解放で、多くの土地を失いながらも、旧弊とプライドに捉われ続ける家長と長男。次男はアウトローに、長女は左翼分子になりながらも、家から離れることにより、返って正常を保つところが皮肉。そして一番の犠牲者奇子。家の都合により、22年間も土蔵に閉じ込められることに。実際この頃、私宅監置という名の座敷牢がまだ存在したので、奇異ではない。残酷だが、情報や刺激をシャットダウンされた人間がどのように育つかという医学的興味も著者にあったのでは。2023/08/22
hamham
18
大人の手塚治虫。戦後間もない日本の田舎の陰鬱な地主社会と、畜生にも劣る男の性欲の地獄絵図。遺産が欲しいからと自分の嫁を親父に差し出し、親父も自分の息子の嫁を孕ませて親子そろって畜生ですわ!常識人面して、異母妹に手を出す兄貴も畜生ですわ!リアルに吐き気を催す人間模様。2018/01/09
じょう
15
読み友さんの感想を読んで。戦後の日本の闇の部分や田舎の旧家一族の闇の部分、色んな闇が黒い沼のあぶくの様に湧いてきて、幼い少女達が犠牲になってしまった。今作の様な犯罪絡みでなくても、病気等で人前に出したくないと判断された人は亡くなるまで座敷牢で・・・とかが あったんだろうなと思うと怖くなった。取り急ぎ下巻へ。2017/01/29
Takashi Takeuchi
14
大人向けの手塚作品が好きです。『アドルフに告ぐ』が大好きですが、この『奇子』ものめり込んで読んだ。戦前の田舎の封建的な家長制度の下の歪んだ家族関係(横溝正史的な世界)。そこに下山事件など絡めてかなり重い話だが続いて下巻へ。科学や未来を描きながら一方でこんな土着的なえぐい世界も作れる、手塚治虫ほんとうに天才。2021/04/20