出版社内容情報
古代以来の聖書に準拠した世界認識に180度の転換をもたらした科学による知の「革命」。知の大転換のプロセスをスリリングに描く。「天地創造は六千年前」──それが、聖書の記述こそが正当な歴史とされてきたヨーロッパにおける、古代から中世に至る長い間の「常識」でした。逆に言えば、彼らの感覚にとって、「六千年」というのは恐ろしく長い時間と見なされていたと言うことでもあります。ところが、ルネサンスおよび大航海時代の始まりにより科学的な探求が始まり、地理上の知見がこれまでになく大きな広がりを見せるようになると、様々なところで聖書の記述と齟齬をきたす事実が発見されるようになります。たとえば中国の歴史が知られるようになると、それがどうやら「六千年」よりも古いことが明らかになり、「天地創造は六千年前」というそれまでは自明と思われていた「常識」が揺らぎ始めます。また、地質学の知見によっても、地球の歴史が六千年よりも実はかなり長いのではないかと考える学者たちが現れるようになります。例えばダーウインは、当時としては大胆なことに地球の歴史を三億年前までさかのぼらせます(もっとも、この説は非難を浴び、結局ダーウインは後に撤回することになるのですが)。かくして「普遍的」と思われていた聖書をベースとした歴史(これを普遍史と呼びます)は、至る所で綻びを見せ始め、ついには深刻な危機に陥ります。神の存在の元、意味ある統一体をなしていたと思われていた宇宙は、デカルト・ニュートンによって単に機械的な運動をする物体の集まりに他ならないとされ、アダムはすべての人類の祖としての地位を失い、またリンネによって、人間も動物の一種へと「降格」されてしまいます。またその一方では、この「革命」のおかげをもって歴史が聖書から「独立」し、現在のような歴史学としての出発点を築くことにもなりました。本書では、「科学」の発展によってヨーロッパの人々の世界認識が根底から覆されてゆくプロセスを、デカルト、ニュートン、ビュフォン、リンネ、ダーウィンなど著名な科学者、哲学者から、ガッテラー、シュレーツァーなど今では忘れられてしまった歴史家の仕事なども追いながら丹念にたどってゆきます。
第一章 科学革命と普遍史の危機
第二章 啓蒙主義における自然史の形成と人間観の変革
第三章 ドイツ啓蒙主義歴史学における普遍史から世界史への転換
第四章 進化論と世界史──世界史記述におけるアダムの死
岡崎 勝世[オカザキ カツヨ]
著・文・その他
内容説明
「天地創造」は6000年前、アダムはすべての人類の祖…「常識」は、いかに覆されたか?知の大転換のプロセスをスリリングに描く!
目次
第1章 科学革命と普遍史の危機―宇宙から機械論的宇宙へ(デカルトと普遍史の危機―デカルト『哲学の原理』(一六四四)
ニュートンと普遍史の変革)
第2章 啓蒙主義における自然史の形成と人間観の変革(ビュフォンの自然史記述と啓蒙主義的世界史―『自然の諸時期』(一七七八)
人間観の変革―リンネ『自然の体系』の人間論とブルーメンバッハの修正)
第3章 ドイツ啓蒙主義歴史学における普遍史から世界史への転換(ガッテラーにおける普遍史から世界史への転換;シュレーツァーにおける普遍史から世界史への転換)
第4章 進化論と世界史―世界史記述におけるアダムの死(ハックスレーとラボック―「アダム」から「先史時代」へ;進化論と地球の年齢の問題―ダーウィンとケルヴィン卿)
著者等紹介
岡崎勝世[オカザキカツヨ]
1943年生まれ。1967年に東京大学文学部西洋史学科卒業後、同大学大学院博士課程単位取得退学。埼玉大学名誉教授。専攻はドイツ近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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