出版社内容情報
わたしが搦め取った男でございますか? これは確かに多襄丸(たじょうまる)と云う、名高い盗人でございます――。馬の通う路から隔たった藪の中、胸もとを刺された男の死骸が見つかった。殺したのは誰なのか。今も物語の真相が議論され続ける「藪の中」他、「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」など、芥川の名作、6編を収録。
※本書は、講談社文庫『羅生門・偸盗・地獄変・往生絵巻』(1971年7月)および、『日本現代文学全集56 芥川龍之介集』(1980年5月)を底本とし、旧漢字・旧かなとなっているものは新漢字・新かな遣いに改め、ふりがなを加えました。底本に見られる誤植等は訂正するなどしましたが、原則として底本にしたがいました。また、底本にある表現で、今日からみれば不適切と思われる言葉がありますが、作品が書かれた時代背景と作品的価値、および著者が故人であることなどを考慮し、底本のままとしました。よろしくご理解のほどお願いいたします。
芥川 龍之介[アクタガワ リュウノスケ]
著・文・その他
内容説明
わたしが搦め取った男でございますか?これは確かに多襄丸と云う、名高い盗人でございます―。馬の通う路から隔たった藪の中、胸もとを刺された男の死骸が見つかった。殺したのは誰なのか。今も物語の真相が議論され続ける「薮の中」他、「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」など、芥川の名作、6編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
502
黒澤明監督の「羅生門」を観るなら、その前にこれを、という読み友さんのアドバイスに従い、表題作のみ。既読感いっぱいだったが、やはり詳細は忘れていた。構成の巧さよ。いつの世も、美しい女は罪つくりな存在だね。これと『羅生門』をミックスさせ(?)どう映像化したのかつくづく楽しみである。2023/10/11
ehirano1
138
表題作が印象に残りました。各々の登場人物の告白が各々の立場で告白され、挙句の果てには巫女の口を借りたる死霊(つまり殺された男)まで告白に加わる始末で(w)、一体何が真実なのかはまさに藪の中、というかむしろカオスです。しかし、各々の告白はどれも真実なのではないかと思いました。本物語は何が真実かというのを暴くのではなく、各々にとっての異なる真実(心情)を露わにし、人間の心情はここまで各々で違うのですよと示唆しているのではないかと思いました。2018/06/10
ehirano1
83
信じるか信じないかはあなた次第!~セキタクスゼイアン、というのではなくてwww、メタの塊のような本書。いかようにも解釈出来ていかようにも箴言を得ることが出来ると改めて思わされます。2021/01/25
ちょろこ
70
人間って…の一冊。人間の裏側のあんな部分やこんな部分…これはまるまる一冊、人間という生態について説明されているような…事典のようなそんな気がした。表題作「藪の中」は保身のための証言がいろいろな真相を浮かび上がらせる。読めば読むほどまさに真相は藪の中。それこそ十人十色、いろいろな見解が生まれるのもわかる気がする。有名な他作品にもその先を読者に委ねるような終わり方を感じた。昔は気づかなかった…今思えばなんだかすごい。2016/04/05
sk4
65
ほほう。これは・・・【 文 豪 ミ ス テ リ ー ! 】 NTRエロい・・・と、一読目はそこばかり気になって仕方がなかったんだけど、終盤にミステリーだという事に気づきすぐに再読。(※NTR=寝取られを主題にしたエロ話) 四人の独白の嘘を見抜き、真相の推理を読者に委ねるリドルストーリー。 実に面白い。 文豪やるなぁ。^ ^2013/09/27