出版社内容情報
恋人と過ごしたどんな時間が好きですか? デートといってもひとそれぞれ。12人の恋愛の形を、角田光代が瑞々しくつむぐ。1番記憶に残っているデートって何ですか?
恋人と過ごした、どんな時間が1番心に残ってる? デートといってもひとそれぞれ。中学生だった頃の帰り道、地味なパートナーとの淡々としたひととき、年上の女性を追っていったギリシャ旅行……ていねいに紡ぎ出された12の恋模様。読者100人のアンケートによる「最も好きなデート」の実態も収録した短篇集。
ちいさな幸福 All Small Things
彼女たちのちいさな幸福──あとがきにかえて
角田 光代[カクタ ミツヨ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
93
どうしてこんなにも角田光代の描く小篇はうまいのだろうか。するりと腕の中に入る子猫のように心地よいのだ。現実に起こり得ないということはわかっていても、バトンを渡すように次の登場人物が現れると、このやりとりがほんとうに起きているのではないかと錯覚してしまうのだ。物語は、長谷川カヤノの「今までで一番印象に残っているデートって、どんなの?」と同僚に聞くことからはじまる。13の小篇はどれもわずか数頁の短いお話であるにも関わらず、実に印象的だ。大切な記憶というのは、その人の根源を見ているようでいとおしくなるのです。2013/06/21
あつひめ
82
思い出に残るデートと史上最低のデート。どちらも、日頃は忘れてしまうようなちっぽけなことなのだ。だけど、何かの拍子に魚の小骨のようにスッキリしない思いを感じさせるもの。誰にでもそんな思い出があるのかもしれない。それぞれの思いを心に宿しながら、次々、バトンタッチするように投げ掛けていく。とても面白い趣向だった。ちいさな幸福。人様に言ったら笑われそうなちっぽけな喜びが積み重なって人は幸福貯金をしていくのかも。塵も積もれば山となる。読んだ人が何かしら過去を思い浮かべたくなる一冊。2015/02/24
chantal(シャンタール)
69
「みんなどんなデートをしてるんだろう?」と言う疑問を次々と質問し、語っていく連作短編。デートとは言えないようなものだったり、最悪なデートだったり、人が聞いたらすっごくしょぼいと思われるデートだったり。でも、誰にでもきっと「この人といることがこんなに幸せ」と思える瞬間はあるはずで、ずっと忘れられないでいたり、何かの拍子にふっと思い出すことがあったり。人生ってとてもささやかだけれど、暖かいものの積み重ねなんだろうな。2018/03/28
masa
68
著者の得意な主人公がリレーする連作短編は大好物。甘い物好きな人が疲れたときやご褒美のためにとっておきのスイーツをストックしておくように、僕はこの小説をそうしていた。期待通りの満足感に脳が微睡む。ごく普通に冴えない主人公たちの、ちょっとおかしな日常に潜むくすぐったいパンチラインと圧倒的なデジャヴ感。どれもこれも自分の為の物語なんじゃないかという手触りは、まさにちいさな幸福。何故か忘れられない想い出ほど、冷静になると他人はおろか自分でも甚だどうでもいいものな気がするけれど、そんなしょぼい日常こそが奇跡なんだ。2018/01/20
pdango
62
★★★★☆「今までで一番印象に残っているデートって、どんなの?」みたいな質問でリレー形式で繋がっていくショートストーリー。その問いかけに、つい、私だったら…と考えてみる。そういえば、つきあってもなくて恋心もなかった人との1回こっきりのデート?というのが、今の今まで忘れていたけど、けっこういろいろあったなと、懐かしくあれこれ思い出して楽しかった。2018/04/22