出版社内容情報
真夜中から空が白むまでのあいだ、どこかでひっそりと深淵が口を開ける。
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう1人の若い女性をとらえる――。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。
村上 春樹[ムラカミ ハルキ]
著・文・その他
内容説明
時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる―。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
348
23:56~6:52の出来事が淡々と進みます。そこには24(米ドラマ)のようなジェットコースターはなく、只々淡々と粛々と物語が進み、大きな事は起こりそうで起こりません(これがまた良いです)。読み進めるに従い、深夜という独特の雰囲気に引き込まれる凄い小説です。また、一項一項の中途半端な時間が”深夜という独特の雰囲気”を際立たせていいて、”深夜という独特の雰囲気”をこんなに上手く小説として表現されていることに感服するばかりです。2016/05/04
サム・ミイラ
336
初村上春樹作品。たった一晩の出来事。それぞれのエピソードは少しづつリンクしながら、しかし解決をみる訳ではなく淡々と朝を迎えます。一番の謎は眠り続ける娘と見つめる男。あれは何だったのか。特に難解とは感じませんでしたが引き込む力は凄い。我々の日常はこういう事の積み重ねであり、都合よく解決する事のほうが虚構。世の中そんなもの。これがリアル。そう言われたような気がします。カーティス・フラーにベニー・ゴルソンさらにホール&オーツまで、音楽を感じさせてくれる、そして黒のグラデーションを感じさせてくれる作品でした。2014/05/25
HIRO1970
223
⭐️⭐️村上さんの10年前の作品ですので、少し前のものですが、正直なところ余り魅力は感じませんでした。次の機会に期待したいと思います。2014/05/05
tokko
210
短い文を多用して人物や情景を描写する。誰がどこでいつ何を見ているか分からない。周囲に無関心であると同時に、互いに監視されている現代人の閉塞感。つながりを持たない希薄な人間関係に疲弊する姉妹。彷徨う人々を24時間受け入れるファミリーレストラン、コンビニエンスストア、ラブホテル…。コンビニエンスストアに置き去りにされた携帯電話。現代を象徴するものがふんだんに描かれているけれど、そこには教訓や批判はなく、あるがままをあるがままに写したように思えた。2011/10/19
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
187
[再読]真夜中の、眠っているうっそりとした感じ、嫌いじゃない。静かなんだけど空気が滞っているような、みんなが息をひそめて様子をうかがっているような。夜の街は昼の街とは確かに違っていて。 第三者的実験的な視点から展開される静かな物語が、学生の頃はあんまり魅力じゃなくて、村上春樹作品の中では読み返しの少なかった作品。その頃はすかいらーくも知らなかったなぁ。それぞれの夜中の事件が繋がるようで繋がらなくて、アフターダークにいったんすべてを曖昧にしながら終焉を迎える感じがよかった。夜明けの、目に明る過ぎる日差し。2019/09/25