出版社内容情報
高木 徹[タカギ トオル]
著・文・その他
内容説明
「情報を制する国が勝つ」とはどういうことか―。世界中に衝撃を与え、セルビア非難に向かわせた「民族浄化」報道は、実はアメリカの凄腕PRマンの情報操作によるものだった。国際世論をつくり、誘導する情報戦の実態を圧倒的迫力で描き、講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞をW受賞した傑作。
目次
勝利の果実
国務省が与えたヒント
PRプロフェッショナル
失敗
情報の拡大再生産
シライジッチ外相改造計画
民族浄化
国務省の策謀
大統領と大統領候補
逆襲
強制収容所
凶弾
邪魔者の除去
「シアター」
追放
決裂
著者等紹介
高木徹[タカギトオル]
1965年東京都生まれ。’90年東京大学文学部卒業、NHKにディレクターとして入局、現在報道局勤務。2000年10月放送のNHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~」は、優秀なテレビ番組に贈られるカナダのバーフテレビ祭「ロッキー賞(社会・政治ドキュメンタリー部門)」候補作に。同番組の取材をもとに執筆した『ドキュメント 戦争広告代理店―情報操作とボスニア紛争』は、大きな話題を集め、講談社ノンフィクション賞・新潮ドキュメント賞を受賞した。第2作の『大仏破壊―バーミアン遺跡はなぜ破壊されたのか』(文芸春秋)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。気鋭のジャーナリストとして期待されている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
196
第24回(2002年)講談社ノンフィクション賞。 旧ユーゴのボスニア紛争を題材に、国際世論を 巧みに誘導するアメリカPR企業の実態を描く。 冷戦終結後の各地で発生する様々な民族紛争 …誰が当事者で 誰が悪いのか、実はよく わからないことが多い。国家をクライアントと するアメリカのPR企業…民族紛争の当事者が メディアを使って、欧米の世論を味方につける。情報戦の怖さを実感できる、そんな作品だった。2018/06/17
岡本
132
ユーゴスラビア連邦とボスニア・ヘルツェゴビナの間で起こったボスニア紛争の裏側で行われていた情報戦を記したドキュメント作品。生前という事もあり、ボスニア紛争自体をあまり知らなかったのだが、読み応えのある内容だった。巻末にもあったが日本にはこういったPR戦略は疎く、出版されて15年たった現在でも同じ状況が続く。諸外国との問題を抱える今、情報戦略の必要性を強く感じた一冊でした。2017/12/16
ehirano1
122
怖ぇ~、怖すぎる。真実よりもイメージ、そしてイメージを作り上げるための決定的なキーワードもしくはフレーズを如何にバズらせるか。これこそが戦争の勝敗を左右する。しかもそこには捏造はない。ただし、誇大表示はあるものの捏造ではない。今尚懲りずに勃発する戦争、事件、選挙を正しく認識することは可能なのかと戦慄しました。メディアリテラシーが唯一の救いかも知れませんが、それとて果たして・・・。2024/03/19
buchipanda3
105
90年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の舞台裏を描いたドキュメンタリー。近年では国際紛争における国の情報戦略の重要性が高まっているが、本件はその効果を示す絶妙な事例。著者は中立的に事柄と人物を描き出す。そこに善悪の裁きは無いが、読み進めるうちに当初の彼らへの印象の変化に様々な感情が揺り起こされた。PR企業はクライアントの利益のみ追求。ビジネスの掟であり、やらなきゃやられる。そして世論は複雑なものを単純化したがる。キャッチーな言葉の狂乱の先に残るのは虚無と滑稽さ。視点の固定や思考停止の危うさを改めて感じた。2022/02/25
はっせー
92
色んな意味が寒気がする本。ユーゴスラビア。この名前を聞くと冷戦終了後に紛争があった地域として記憶している方を多いだろう。この本はボスニア・ヘルツェゴビナの外相がとあるきっかけでアメリカのPR会社と契約をしてユーゴスラビア連邦を国連追放・セルビア空爆まで行うようになったまでのプロセスが書かれた本になっている。PR会社が入ることによって見せていた世界の見え方が変わり、わかりやすい善悪二元論となった。PRとは既存のものに新たな価値や見え方を創造する活動だと理解した。日本はやなりPRが苦手だなと感じた!2022/09/18