内容説明
昭和二十年、嵐の台湾沖で、二千三百人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸。その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく―。いったいこの船の本当の正体は何なのか。それを追求するために喪われた恋人たちの、過去を辿る冒険が始まった。日本人の尊厳を問う感動巨編。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
1951年東京都生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞する
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
233
昔、秘書室の女の子からお薦めと借り、「面白かった」と返した記憶があります。ふと今回再読。戦時中、攻撃してはならぬと国際的に決められた大型船が何故か米軍に沈められた。世界に誇る大型客船『弥勒丸』は当時軍事的秘密の物資を運んでいたらしい。謎の男が弥勒丸の引き上げを依頼し、関係者が次々と不信な死を遂げる。「敗戦は、昭和16年の8月の末に、はっきりとわかっていたのだよ」 過去と現在を交互に記し、弥勒丸沈没の謎に迫る!昔借りて読んだ時より更にワクワクして上巻終了!感想は下巻に譲るがやっぱり再読は意味があるね‼️🙇2018/12/18
HIRO1970
125
⭐️⭐️⭐️浅田さんの上下巻の長編。ハズレの無い浅田さんだけにワクワクしながら読み始めましたが、期待を裏切らないどころか、期待を遥かに上回った面白さです。20年以上前の物ですが、現代と戦時中がパラレルに推移して、魅力のある惹きこまれる作品となっています。後半も楽しみです。2014/09/14
yoshida
113
大東亜戦争末期に撃沈された徴用船「弥勒丸」。国際赤十字を通じ連合国捕虜への物資を輸送する任務があり、撃沈されない筈だった。しかし弥勒丸は撃沈され約二千人の犠牲を出す。台湾の要人から弥勒丸引き揚げを依頼された軽部と日比野。政界、財界、ヤクザと各界への要請となる弥勒丸引き揚げ。果たして弥勒丸の真の使命は何か。果たして何が積んであったのか。児玉誉士夫や瀬島龍三をモデルとした人物も登場。日本人が引き揚げしなくてはならない義とは何か。また弥勒丸に密航した白系ロシア人の少女の果たす役割は。謎を残しながら物語は下巻へ。2020/09/21
nobby
101
『日輪の遺産』以来の浅田作品。史実に基づくという阿波丸については全く知らぬまま読み始めたが、現在と戦時中を交互に入れ替わる視点の絡まり具合が絶妙。何故、赤十字の看板を背負っていた客船が2000人の乗客もろとも沈められたのか徐々に明らかになっていく。弥勒丸に関わった人物達の口を閉ざし重荷を背負う様から、その迎えるであろう結末への背景の哀しみが垣間見える…タイトルでもある交響組曲『シェエラザード』が響く余韻に浸りながら早速下巻へ。2016/05/16
昂 ふたたび
98
静かな展開のなか、弥勒丸に纏わる謎が、戦争末期と現在が交差し、謎が徐々に明らかになっていく。役者は揃った。戦争を背景に悲しい人間ドラマが、下巻に待っている様な気がします。ワクワクしています。2015/08/19