出版社内容情報
桐野 夏生[キリノ ナツオ]
著・文・その他
内容説明
主婦ら四人の結束は、友情からだけではなく、負の力によるものだった。その結びつきは容易に解け、バランスを欠いていく。しかし動き出した歯車は止まることなく、ついに第二の死体解体を請け負うはめになる。彼女たちはこの現実にどう折り合いをつけるのか。大きな話題を呼んだクライム・ノベルの金字塔。’98年日本推理作家協会賞受賞。
著者等紹介
桐野夏生[キリノナツオ]
1951年生まれ。’93年、『顔に降りかかる雨』で、第39回江戸川乱歩賞を受賞。’97年発表の『OUT』は「このミステリーがすごい!」の年間アンケートで国内第1位に選ばれ、翌年同作で日本推理作家協会賞を受賞した。’99年『柔らかな頬』(講談社)で、第121回直木賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
612
上巻の段階での予想は外れた。読み込みが足りなかったのだ。下巻に入って間もなく、当然そうだったと気が付いた。したがって今度こそ結末の予想は外れなかったが、明らかに作家が数等も上手だ。雅子とヨシエそれぞれの閉塞と絶望。下巻に入っても益々やりきれなさが募るばかり。もっとも、下巻ではそれを突き動かしてゆく者としての佐竹の存在が大きい。本書はまさに日本の小説界が生み出した"ロマン・ノワール"である。ピエール・ルメートルにも負けない。圧倒的なリアリティと日常の苦しさ。そして、"OUT"は結局どこにもないのだろう。2017/04/24
ehirano1
279
唯々『究極』という言葉がぴったりのエンディングだと思いました。途中までは『狂気』だとおもっていたのですがねぇ・・・流石に奥が深いです。感服の一冊。2018/05/12
おしゃべりメガネ
162
97年の『このミス』大賞受賞作品は決して伊達ではない圧倒的なリーダビリティでした。今から20年以上も前の作品とは思えず、全く違和感なく読み進めていけます。死体解体に関わる「雅子」と謎の男「佐竹」とのなんとも言えない距離感が絶妙です。人それぞれに欲望と闇を抱え、そんな中にも僅かな希望を見いだす、そんな桐野さんの世界観は病み付きになってしまいます。本当に'OUT'だったのは誰なのか、何だったのか、いや、そもそもが'OUT'だったのか。登場人物の心理描写の筆力にただただ呑み込まれてしまうほど、イッキ読みでした。2020/03/20
優希
148
行いがすぐに明らかになると思いきや、事態が思わぬ方向に転がっていくのが恐ろしかったです。共犯者だったはずの主婦たちは、負の力が結束力だったが故に関係は壊れるのに、運命の歯車は狂っていく。死体解体を請け負うことになった裏側の復讐者の存在。事態はどんどん泥沼化していき、精神的に壊れていくのではないかと思わされるほどでした。特に後半は恐怖の一言に尽きます。まさにリアルな犯罪小説。救いのない終わり方が印象に残りました。2017/03/22
chieeee-
126
段々と何者か分からない者に追いかけられている恐怖があって、読んでいると恐ろしかった。死体処理をしてからたかが外れた雅子とヨシエ。あの事件とは関係のないところで墜落していく邦子と弥生。作者の手腕だろうけど、上巻では思わなかったけど、下巻では邦子はもちろんの事、弥生がどうしても好きになれなかった。でもこういう女性が多いのがリアル。2020/02/23