内容説明
人は何を幸福と感じて生きるのか、死とは何か…。世界最後の桃源郷・フンザの静謐な夜空に生と死を思い、インダスの銀河に亡き父の面影を映す。六七〇〇キロの酷暑と砂漠の旅は、ついに終着の地ガンダーラへと辿りついた。熱砂の大地に原点を刻み、著者の新たな出発を告げる「人生の紀行」、感動の完結。
目次
第17章 星と花園
第18章 インダスという名の銀河
最終章 火を踏みしめる少年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マッキー
15
とうとう旅は終わった。別に感動的な終わり方をした、というわけではなくただ始まりと終わりだけがあるそんな旅。他の作者から文章を引用している箇所が多いのが少し気になったが、本音と時折のコミカルなやり取りとありのままをうつした写真が楽しませてくれた。2018/12/25
syuntaro
11
【鳩摩羅什の足跡を辿る傑作エッセイ】仏教典を漢語に翻訳し、仏教伝播に貢献した鳩摩羅什。彼の足跡を辿った作家・宮本輝一行の紀行文。クンジュラーブ峠を越え、カラコルム・ハイウェイを進んだ先にある秘境・フンザ~ガンダーラ~イスラマバード迄を記す。美しく豊かな色彩の街・フンザ。ホーパル氷河への危険なドライブ。強烈な暑さのチラスのホテルの静けさ。激流のインダス河が持つ静寂。ホテルのテラスで見た美しい星空。過酷な旅の中で氏は西域への未知・夢・謎・冒険に似た思いをし、自身の人生を重ね、未来へとその目は向かっていた。2014/06/02
ひろみ
10
自分の奥にある思いや、その他これまでの色々なことが、もし旅に出なければそのまま葬り去られるのではないか、と思った。旅に出るとはそういうものを掘り起こす一つの方法ですね。 桃源郷フンザの描写がとても心に残りました。そして、最終章は白眉だったと思います。それから、あとがきの次男さんに向けた言葉「腹の立つことばっかりだったけど、俺はお前が一緒で楽しかったよ。」も。6巻40日の旅、もっともっと大旅行が終わってしまった気分です。私行ってないのに(笑)。2021/12/05
鬼山とんぼ
7
前巻と同様、宮本輝のエッセンスというべきものが含まれ、充実した読書ができた。なべて卓越した業績や成果というものが、本人の「好きだから」に始まり、そこに永続させる要因が加わった結果だという洞察には強く同感。この文一つがお経みたいに感じた。精神病院で死んだ父への処遇を見て、「いつか親父の仇を取ってやる」と念じた20歳の作者。流転の海シリーズで見事にそれを果たしたと思う。通常の旅行案内では語られない、パキスタンという国の実情(どうも日本人にはインドよりも合っていそうだなあ)とかいろいろ参考になる点が多かった。2023/01/08
T. みぃた
6
文庫で再読。フンザからイスラマバードへ。鳩摩羅什の足跡を追う6700キロの長い旅が終わった。ハヤトくんが撮った世界最後の桃源郷フンザの写真に惹かれて文庫を揃えたんだった。2011/06/23