内容説明
「ロシアとロシア人は退屈しない」そう断言する著者は、同時通訳という仕事柄、彼の地を数限りなく訪れている。そして、知れば知るほど謎が深まるこの国は、書かずにはいられないほどの魅力に満ちあふれている。激動に揺れながら過激さとズボラさ、天使と悪魔が共に棲む国を鋭い筆致で暴き出す爆笑エッセイ。
目次
第1章 酒を飲むにもほどがある
第2章 反アルコール・キャンペーンの顛末
第3章 その前夜
第4章 連邦壊れてまだ日の浅ければ
第5章 肖像画コレクション
第6章 ロシア人との交渉術
エピローグ 日本海を挾んでボケどうしの漫才
著者等紹介
米原万里[ヨネハラマリ]
1950年東京生まれ。ロシア語会議通訳者、エッセイスト。’59~’64年、在プラハ・ソビエト学校に学ぶ。東京外国語大学ロシア語科卒業、東京大学大学院露語露文学修士課程修了。’80年設立のロシア語通訳協会の初代事務局長を務め、’95~’97年会長。’92年、報道の速報性に貢献したとして日本女性放送者懇談会SJ賞を受賞した。’95年『不実な美女か貞淑な醜女か』で読売文学賞・随筆紀行賞受賞。’97年には『魔女の1ダース』で講談社エッセイ賞を受賞した。著書はほかに『ガセネッタ&シモネッタ』、訳書に『わたしの外国語学習法』などがある
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
299
ソ連邦崩壊前後からエリツィン末期あたりのロシア事情を描き出す。今回の主な登場人物はゴルバチョフとエリツィン。政治家以外でもチェリストのロストロポーヴィチなど超大物揃い。当時のロシア、あるいは世界の趨勢を、通訳であってこそ知りえた至近距離から語る。節酒令(事実上の禁酒令)のゴルバチョフに大酒飲みのエリツィンと、ロシアは何をするにも極端だ。ロシア小咄を随所に交えながら語る手法は、米原万里さんならでは。なお、本書がこういう形で出来上がったのには優秀な編集者、福田恭子さんの力量とセンスの賜物だろう。感謝!2015/02/11
ehirano1
135
アネクドート、ウオッカ、国民性、歴史、どれを取ってもロシア程興味深い国はないのではないかと再認識しました。本書に書いてあることは結構カタイ事も多いのですが、前半のアネクドートが抱腹絶倒なためカタイ話にもすんなり入り込めます。もちろん著者のライティングの巧さもありますが、興味深い考察により理解が深まります。しかしやはり「ロシアは謎の謎、そしてまたその謎(p274)」には全く同感です。2016/10/22
ゆいまある
118
ロシアについての読み物集。4人に1人がアルコール依存症ではと言われる程飲む。ウォトカは牛肉より安く、人々は酒で不満を紛らわし、短命である。気取らず情に厚く、お節介で寂しがりやな人々に好感が持てる。全く日本人は情を忘れてるよね。20数年前に書かれた本だが、軍上層部に権力が集まりやすい構造ではあり、既にロシア政府はNATOと周辺国の関係に過敏である。きっとウクライナで酷いことさせられてるロシア人も傷ついてるんじゃないかなと思ったら泣きそうになった。米原さんにはまだまだロシアとの架け橋を続けて欲しかったなあ。2022/05/05
おいしゃん
59
著者初読み。ちょっと親しみにくいイメージを抱いていたロシア人が、一気に愛らしく感じるエッセイ。他の作品もどんどん読んでみたい。2017/03/11
マリリン
57
第一章「酒を飲むにもほどがある」は抱腹絶倒。以降「半アルコール・キャンペーンの顛末」と、ロシアを象徴するかのような酒事情が深い。「その前夜」「連邦敗れてまだ日の浅ければ」「肖像画コレクション」「ロシア人との交渉術」とタイトルを多少深読みしただけで本作の魅力が伝わってくる。書かれたのが20年以上前なので現在はどうなのか気になるものの、自家製ウォトカを醸造し、ジャガイモ作りに精を出し、土をいじりながら自分を取り戻す、という意外な側面を知った。米原さんならではの視点と感性で書かれた本作からロシアの深淵が見える。2022/09/17