感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
65
子供のための上質なミステリーを、という趣旨で作られたレーベルなのに、お前らわざとやってるんだよね？って言うぐらいえげつない話が多い事で定評のあるミステリーランド。もちろん子供向けだからといって子供騙しになったら駄目なんだけれども。同じ団地に住む活発な少年ショウタと引きこもりがちの親友トモヤ。2人の少年は、子供をさらって奴隷にする恐ろしい"子どもの王様"と戦うことになる。『ハサミ男』のような読者を出し抜くトリックはあえて使っていないのかミステリとしての側面よりも、少年の成長・友情ものとしての側面が強いかも。2011/12/15
へくとぱすかる
52
子どもの目から見れば、大人の世界はこう映るのかということをまざまざと見せつけてくれるような小説。ミステリというよりは、現代の家族をとりまく事情の、みにくい部分を取り上げた小説とみた。ショウタは自分たちの世界を守ろうと、手をつくし行動を起こすのだが、結果としては後味のよくない結末を残す。だが、これ以上何ができたのかを思うと、彼を責めるわけにはいかないだろう、という気がする。テーマが重い話だった。ちなみに作者・殊能氏は一昨年、４９歳の若さで亡くなった。よくは知らなかったのだが、覆面作家だったということだ。2015/01/10
sk4
47
これは・・・！ ミステリーランドの作品にあってミステリーではない。 どんでん返しが持ち味のミステリーテラーが書いた【純粋ジュヴナイル】。 何重にも登場してくる主題のモチーフたちが語る【大人の姿】は主人公ショウタの目にどう映っているのか？ そして【子どもの王様】との戦いの果てに、ショウタはそれらをどう消化したのか？ 正義の清廉さで悪を打ち破る神聖騎士パルジファルの抱える矛盾に気付きながらも、パルジファルのテーマソングを口ずさむ。 それはもう【答え】ではなくて【願い】。 苦味の効いた【ジュヴナイル】です。2013/05/25
junkty@灯れ松明の火
45
１人ミステリーランド祭開催中！友達が抱える闇の部分を特撮ヒーローと自分を重ね合わせて、主人公が解決しようと奔走する物語。子供が大人になるとは？正義って？ルールって？と色々考えさせられる事が多かったです。でも、ラストの解決部分はちょっと凹みます。主人公本人がその事を自覚している様なのが救いではありますが･･･。子供を持つ親としては、現実に起こり得る世の中なのも事実だと思うと、更に凹みます。決して子供向けの軽い作品ではありません。この作品は間違いなく大人が、子供を持つ親が読むべき作品だと強く思います。2011/07/28
風眠
32
子どもには読ませたくない本として紹介されてたミステリーランドシリーズ。子供向けとは思えないくらい、本格的なミステリーだった。子どもが読んで、どこまで理解できるのかな・・・と思うのは、いつだって大人だ。難しいだろう、分からないだろう、と思うのは大人の思い上がりで、子どもは大人が思うよりもずっと、いろんなことを感じていたり、分かっていたりするものだと思う。団地の案内図のトリックは、本当にお見事!「大人になったら何になりたいの?」と聞かれたショウタが「僕は大人になりたい」と言ったラストシーンが切なかった。2012/06/16
