内容説明
ブロックルハースト・グローブは、郊外によくある市場横丁の、ちょうど上手にあたるところの住宅街。どの屋敷も大きな一戸建てで、生け垣でしっかりと囲われた庭がついていた。メニム一家の住む五番地が、ちょうど真ん中にあるのだが、この家族についてのことは、近所でもほとんど知られていない。メニム一家は、血と肉でできた人間ではなかった。家族全員が等身大の布の人形という、愛すべき一家だったのだ。しかも、生きている。四十五年間、平和に続いてきた魔法の世界が、突然舞いこんだ一通の手紙によって重大な危機にさらされた。家族の愛と絆をユーモア豊かに描く、感動の秀作。ガーディアン児童文学賞、1994年度受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mntmt
13
人形が家族ごっこをしている。ヤバい本。でも、児童書なのでファンタジーとして楽しめます。途中で、人間も家族ごっこをしているのかもしれないと思い始めた。2022/11/11
おはなし会 芽ぶっく
12
メニム一家は郊外の住宅に住んでいる。当主マグナス卿(おじいちゃん)、しっかり者のチューリップおばあちゃん、無口なジョシュアお父さん、優しいヴィネッタお母さんの4人家族。でも普通の家族じゃない、彼らは布の人形一家なのだ。人形の制作者のケイト伯母さんがなくなってから40年年間、近所の人に知られることなく暮らしてきた。が、1通の手紙によって災難がふりかかる…。2020/01/23
timeturner
10
面白かった! 人形一家というから低年齢向けの話だろうと思っていたらまるで違ってた。町並みや屋敷だけでなく、人々の生き方が実にイギリス的なのも魅力。人形であることがばれないための工夫や苦労が涙ぐましく、かつサスペンスフルだった。2018/08/20
anakamo
6
ほぼ一軒の家の中だけで起きる家族の会話劇。それぞれの人物(人形だけど)像が素敵。自分たちが人形なのに生きていることを、普段は目を逸らしつつ、でも真剣に悩んでもいる。のが、本当の人間みたい。チューリップおばあちゃんの冷徹さと女性らしい人情が同居してる感じが好きかも。2012/08/02
つきと
5
生きて動く人形の話なんて今ではありきたり!なんて事を思わせない作品。奇抜さと古風さが絶妙に混じり合っている。本物の人間の『ふり』や『ごっこ』をしているメニム達だけど、その中にある思考や感情はふりでもごっこでもないまごうことなき本物。メニムの布触りが鮮やかに感じられるのに本物の人間とかわりない魂も感じられる。布で出来た人形の人間ごっこはシリアスだからこそアイロニカル。2009/10/12