内容説明
「あたし殺されたの。もっと生きていたかったのに」。通り魔に襲われた十七歳の女子高生安藤麻衣子。美しく、聡明で、幸せそうに見えた彼女の内面に隠されていた心の闇から紡ぎ出される六つの物語。少女たちの危ういまでに繊細な心のふるえを温かな視線で描く、感動の連作ミステリ。日本推理作家協会賞受賞作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
295
美しく聡明な女子高生麻衣子が通り魔に刺され命を落とした。加納さんの作品にしては重い入口扉の連作短編集。登場人物は絡み合うが、物語としては其々が独立してるかのような進み方。各編には加納さんらしい日常の謎が散りばめられ、養護教諭の神野先生がさりげない関わり方で謎を解いていく。編が進むにつれ、麻衣子が抱える闇(?)、繊細過ぎるほど脆そうな内面(?)、が見えてくる。透明感に満ち、眩しい程の美しい輝きを持つ反面、ちょっとの衝撃で壊れてしまう脆さを併せ持つガラスのごとき少女達。私は今の若い世代の心の脆さが心配‼️🙇2020/06/10
ダイ@2019.11.2~一時休止
141
女子高生殺人から始まる連作短編集。そんな理由かぁとちょっと怖かったけど面白かった。また作中の童話がなんとなくイイ。2014/10/09
takaC
123
なかなか良かったよ。「どうです?春になったら我々も……」2016/01/20
🐾Yoko Omoto🐾
107
第48回日本推理作家協会賞受賞作。通り魔によって命を奪われた女子高生「安藤麻衣子」。生前の彼女の不安定で繊細過ぎる心理状態(個人的に理解できる部分とできない部分半々)を織り混ぜながら、彼女に関わりのある人物たちが『必然』とも言える縁で繋がりを見せる連作ミステリー短編集。彼女の心を深く理解していた養護教諭「神野菜生子」をキーマンに各章で起こる事件が、最終章で明らかになる通り魔犯の正体に繋がる構成が見事。「何かが起きるについては必ずその原因があり、人が出会うに当たっては必ずその意味がある」という一文が印象的。2014/02/05
ユメ
96
少女という刹那的な時間は、ガラス細工のようで、煌めいているけれどひどく脆い。その危うさは、かつて少女だった者たちの中にも残っている。読んでいる最中、自分の中のガラスにひびが入る音を聞いた、気がした。「ありふれた悩みなんて、ないんだから。特別な悩みなんてものがないみたいに」神野先生の言葉で息を吐く。私たちは皆、ヒトリボッチという名を与えられたお終いのネメゲトサウルスなのかもしれない。39色の花束が手渡される瞬間が妙に胸に残っている。1人ずつ花を選べるあなたたちのガラスは、きっと空洞なんかじゃない。2015/08/08