内容説明
太閤秀吉の愛妻・淀の方が秘所に潜ませた歓喜をよぶ「楊貴妃の鈴」を浮気相手に盗まれた。それを旅役者に化けた石川五右衛門が奪う。一座の娘・織部は太閤の妾になる夜、五右衛門を思い、そっと鈴を体内に…。大盗賊の悲哀を描く「忍者石川五右衛門」、怪しげな敵討ちの「忍者車兵五郎」など怪異忍者出現の九短編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
32
そもそも、忍者とは如何なるものか。文字通り、忍ぶ者である。と、いうことは「あの人が忍者だ。」と、すぐわかるようでは、役目上大いに困るのだ。もちろん彼等は変装するだろう。しかし、敵方だってプロだから見抜かれる。そのため、素性を示す痕跡を何も残さないでおくのが、本当の優秀な忍者なのだ。だから、彼等が歴史上「忍者だった」と記述されていなかったからって、「忍者ではない」という証拠には、全くならない。よって、「忍者明智十兵衛」「忍者本多佐渡守」が存在しても、ちっとも不思議ではないのである。2003/11/11
きょちょ
19
忍法帖の短編集だが、様々な人間模様を見事に描いていて、「忍法」が入っていなくても十分楽しめる作品群。 やはり彼の才能は凄い。 特に面白く読めたのは、「忍者明智十兵衛」「忍者仁木弾正」「忍者枝垂七十郎」「忍者本多佐渡守」。 特に「忍者本多佐渡守」が優れている。 現代ではここまではあり得ないが、徳川時代の重臣たちのこの時代を生きる上でのある意味「悲しい性」には感動すら覚える。 ★★★★ 2017/07/03
うさみＰ
9
権力者の足元で繰り広げられる暗闘。血と肉がぶつかり合う異能の忍者よりも、手足のように扱う一般人の権謀術数の方が怖いわ。『石川五右衛門』はもっと話が膨らんでほしい面白さ。心に刃を押し当てた者たちの物語。作者による忍法帖コソコソ創作小話が面白い。私流水滸伝の模索から始まり、忍術の多様性の発見、ミステリ手法を下地にしつつも、『推理小説』では許されないよう奇妙奇天烈な設定も『忍術小説』なら許される発想の転換。現代でも通じる、ミステリ作家を目指すなら、忍術小説は通るべき課題ではと。2023/04/28
IKUNO
4
『かげろう忍法帖』(山田風太郎) <講談社文庫> 読了です。 短編集です。 これまで読んできた長編作品はエログロを基調としていましたが、 この作品集は一転してシリアスで、非常に読みごたえがありました。 これは忍法帖シリーズに興味のない方でも耐えられる作品集です。 おすすめです。2014/11/06
金森まりあ
3
山田風太郎の忍法帖短編は長編の奇想天外さが無い代わりに簡単に死んでしまうニンジャの在り方のシビアさがよく表れてるなあと思っていたら解説の法月綸太郎が全てを解説していたのでよかった。全部よかったです。2017/11/11
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