内容説明
嘗邑を与えられた孟嘗君・田文は、「天下万民のための宰相たれ」との遺言で斉を出る。魏に乞われて宰相となり、斉にもどって宰相をつとめ、更に秦に赴くが、そこで生涯最大の危機を鶏鳴狗盗で切りぬける。激しい争乱の世と、人間を愛して生きた戦国の名宰相を描ききった、感動の歴史ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
82
孟嘗君は、自由奔放で形にとらわれない生き方を貫いた。どこまでも前向きで、生きることに積極的だった。その自由奔放すぎる姿勢は、『史記』では、多くの食客を雇い諸子百家を鳴動させた無頼の徒にすぎない、と批判的に書かれている。だが、孟嘗君は、公子でありながら無頼漢のような生活に身をおくしかなかったのだ。そして、そんな孟嘗君が何よりも大事にしたのは、自分と運命を共にする一派の団結であり、人間関係だった。そこでしっかりした基盤を作っていたからこそ、孟嘗君は、形にとらわれない自由な発想で動くことができたのだ。2021/04/09
KAZOO
66
この題名は「孟嘗君」とは書いているものの、孟嘗君を育て上げた養父やさまざまな知り合った人物(教師)が主人公ではないかと思いました。このような人物を作り上げた様々な人物です。一国の宰相となるよりもすべての人民のために働けということを忠実に守った孟嘗君も大した人物です。楽しめました。2015/04/28
明智紫苑
47
全巻読了。ハッキリ言って、私は「歴史小説を人生の教科書として読む」のは邪道だと思う。エロ漫画やホラー映画などと同じく、単なる娯楽に過ぎない。純粋にエンターテインメント小説として、歴史小説を読む方がよっぽど面白くなるだろう。要するに、この小説は(多少なりともお説教くささはあっても)面白い。私は宮城谷氏の小説に対してはどちらかと言うとアンチ寄りの見方をしているが、『孟嘗君』は文句なくオススメです(他の宮城谷作品群はどうぞご自由に…)。2018/05/16
とも
46
「人は生まれつき均しくない。それがわかっていながら、平等感を欲している。ところが、人は平等でありたいと思いつつ、自分だけは特別である、と思っている。」「人というものは、恩は忘れるが、怨みは忘れぬ。」 孟嘗君の考え、生き様が記された最終巻。仁をもって国を統べ、すなわち人を統べる。 孟嘗君、全5巻遅読の自分には珍しく一気読み。2017/05/21
佐島楓
36
全体を通してテンポが良く読みやすいけれど、自分に中国史の知識があまりなかったので大意をつかむのに苦労した。これを機に少し勉強してみようかな。2015/02/18