内容説明
親友の恋人を手に入れるために、俺はいったい何をしたのだろうか。「本当の過去」を取り戻すため、「記憶」と「真実」のはざまを辿る敦賀崇史。錯綜する世界の向こうに潜む闇、一つの疑問が、さらなる謎を生む。精緻な伏線、意表をつく展開、ついに解き明かされる驚愕の真実とは!?傑作長編ミステリー。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
981
山手線と京浜東北線が並行して走るシーンはオープニングとして鮮烈な印象を残すと同時に、これから始まる物語の構図を象徴的に示すという意味において、精巧な配慮がそこになされている。物語の構造は、かなり早い段階で読者にそれと分かるし事実その通りに進行してゆくのだが、それでいて小説を読む楽しみが損なわれることはない。東野圭吾の実に練達の運びと言うべきか。ただ、結末に対しては不満を持つ読者もなきにしもあらずという気がする。私は、これこそが読者の予想を超えた実に絶妙なエンディングだと思うのだが。2021/05/08
Tetchy
961
まず冒頭の電車のシーンがツボ。そして殺人事件が起きずにこれほどハラハラさせられるミステリは最近読んでない。そう、“ラブストーリー”と題名に附されながら、これは極上のミステリなのだ。しかし最後にいたってこれはなんとも切ない自己犠牲愛に満ちたラブストーリーなのだと訂正する。こんなに心に残る話は手放しで傑作!と云いたいところだが、『魔球』同様、犠牲を被る相手に不満が残ってしまう。謎は解かれなければならないのがミステリだが、本書においては知らなくてもいいことがあり、それを知ってしまうことが不幸の始まりであった。2011/06/29
zero1
686
今、自分が見ている世界は現実?それとも作られた世界?記憶の改編は可能なのか?夢は現実と何が違うのか?恋愛を絡めた仮想現実作品を久しぶりに再読。連想したのが漱石の「こころ」と「クラインの壺」(岡嶋二人)。友人が好きな女を嫉妬の末に横取りする様子は時代を超越して同じ。智彦の足に関するハンデと同情についても考えさせられる。解説は新井素子(後述)。崇史はどうすればよかった?この後どうなった?長いが多くの読者が支持。嫉妬に狂う【弱い人間】崇史に共感できないので減点。SFの設定も強引。95年に出たが19年映画化。2020/01/24
Kircheis
683
★★★★★ 改ざんされた自分の記憶を辿るお話。 ラストが最高に好き(//∇//) 自分の中では東野さんの作品で1、2を争う感動作です。2019/03/25
Yunemo
592
プロローグの電車シーン、結局意図したものとはちょっと違ったのでは。それにしても、どれが本当の著者作品なんでしょう。読んでる当方が戸惑いで一杯。これがまず最初の想い。「正確な過去」とは、単なる記憶の積み重ねに過ぎない。これがまた難しい。単なる記憶とは、自分に都合よく作り上げた思い込みの強さ。これをプラスに取るかマイナスに取るかで全く違った局面を迎えてしまう。恐いのは自身以外からの強制。何だか漠然とした想いだけが残ってしまいます。それにしても、精神面の強さは女性にかなわない、男性の弱さを自身に感じて読了。2014/06/04