内容説明
覇権を奪いあう諸王たちの中から、楚の荘王が傑出してきた。夏姫を手中にして逡巡した楚王は、賢臣巫臣に彼女を委ね、運命の二人が出合った。興亡激しい乱世に、静かに時機を待った巫臣は、傾国の美女を驚くべき秘密からついに解き放ち、新しい天地に伴うのであった。気品にみちた、長編歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
133
【直木賞】数奇な運命を辿る夏姫(かき)。春秋戦国時代の鄭。波瀾万丈な生き様に何を感じ、何を考えるかは読者の経験と戦国時代への想像力か。著者は愛知県蒲郡生まれ。2014/03/17
KAZOO
83
上巻ではあまり感じなかったのですが、下巻ではこの夏姫の考え方に共感を覚えるようになりました。絶世の美女に生まれついたがためにさまざま運命にもてあそばれて、息子のためにも身を投げ出したりしますが、最後はハッピーエンドになっています。2015/06/14
NAO
79
【月イチテーマ 女祭】この作品では、「風」の描写が何度も出てくる。夏姫に関わった男たちは、彼女の中に風を感じたり、彼女の風から身を守ろうとしたりする。彼女の風とは、男を翻弄する悪風なのだろうか。一方、夏氏の家宰と夏姫の最後の夫となる巫臣は、夏姫が実はまだ誰も本気で愛したことはない、夏姫の芯の部分は無垢なままであると直感する。とすれば、夏姫の風とは、彼女の無垢なるものを守るものだったのか。そして、それは、彼女の本質を知る者にだけは、害をなさなかったのだろうか。2021/04/02
ふじさん
42
夏姫は次々と波乱の人生を辿り、途中息子の子南を亡くす不幸等に見舞われるが、楚の荘王に手中に入るが巫臣に出合い、最後に幸せを掴む。乱世に生きた傾国の美女の一生は想像もつかない物語でただただ驚きの連続だ。女は強いの一言だ。 2020/05/21
Willie the Wildcat
26
”風”。荒んだ世の中だからこそ、求める”何か”。「家」と「家族」を感じる。夏姫、子南。それぞれの苦しみと心の乖離。”風”がもたらす巡り合わせ、なのかなぁ。最後は”風”が止んだのだと思う。少しほっとする。著者のあとがきも印象深い。「ゆるす手」かぁ・・・。思わず自分を振り返る・・・。蛇足だが「祝賀」の意味も勉強になった。戦国ドラマというより人間ドラマですね。巻末の「春秋時代概念図」と「王室・諸侯・世系表」はまさに必須でした。(笑)2012/09/18