内容説明
十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、ミイラのような男が出没した。顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。自らを「地獄の奇術師」と名乗り、復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。「地獄の奇術師」の目的は何なのか。女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡る、本格探偵小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
340
そういえばレビュー書いていなかったと思いつき、たぶん二十年ぶりくらいになるだろう再読。発言が幼稚過ぎてとても有能とは思えない探偵コンビのデビュー作。にも関わらず、バッサリ切って捨てることの出来ない、中毒性のあるシリーズでもある。とにかく雰囲気だすのに必死過ぎて読者が引くくらいフックを盛り込んでくれる。「結末を知るとだいたいガッカリ」と探偵自身に語らせておいて、言葉通りにショボい多重密室。そもそも寝室の鍵かける必然性がない。怪しい人物を出したいためだけに、やたら都合よく近所に存在した村山乞食。等が見どころ。2021/03/12
ダイ@2019.11.2~一時休止
87
二階堂蘭子その1。犯人が分かりやすいような気もするがデビュー作なんでイイとする。2014/03/28
🐾Yoko Omoto🐾
77
再読。江戸川乱歩作品へのオマージュに溢れたデビュー作。名探偵「二階堂蘭子」シリーズ1作目。舞台は高度経済成長の真っ只中にありながら、戦争の爪痕が残る昭和42年。私(黎人)と義妹である蘭子の友人、暮林英希の家族が「地獄の奇術師」と名乗る何者かに次々と不可思議な状況で殺害される。真相は「敢えて」探偵小説の予定調和な趣向だが、その動機や全体の構図にキリスト教に絡めたオカルトテイストを盛り込んでおり、怪奇趣味的な余韻を持たせる結末となっている。毎回犯人に危険な目に合わされる蘭子。その対峙もこのシリーズの見所。2013/10/25
ジャムうどん@アカウント移動してごはんになります
71
蘭子さんデビュー作、良くも悪くも懐かしいというか…。いろいろぶっこまれまくりです。青春ミステリとも言えそうだし、乱歩のような怪奇的要素。うん、いろいろ乱歩だ(笑)作中では古今東西の名作に触れられ、二階堂氏のミステリ愛のようなものを感じます。おかげで読んだことない物の、ネタバレを食らった気も。先ほども言ったとおり、ミステリ愛が強すぎて乱歩を筆頭に作品の背後に先達の方々が見え隠れしているように感じました。とはいえ、この古めかしい雰囲気も結構好き、蘭子のムカッとこさせる言動もかわいいし、もう少し追跡です。2016/01/02
aquamarine
68
再読。この事件の時蘭子は高校生です。昭和の雰囲気(というか乱歩の雰囲気ですね)を持った本だということは覚えていたのですが、事件が昭和42年だということに驚きました。詳しい脚注を読み、もっと国内海外の有名古典にも触れてから読みなおそうと思ったはずなのですが何年も経った今、初読時と比べて自分の読書経験値がそれほど増えている気がしないのが残念です。また蘭子が賢いのはわかるのですがちょっと鼻について好きになれないのも初読の時と同じです。でもこの古き良き探偵小説の雰囲気は私は好きなのでゆっくり再読していきたいです。2015/08/02