内容説明
明治という時代。激変する社会にあって、「次男坊」や「主婦」は、いかなる存在だったのか?また「神経衰弱」という病はどんな意味を持ちえたのか?小説中の、一見小さな事柄を「文化記号」としてとらえたとき、代助、三千代ら揺れ動く人びとの「生」は、鮮やかにその姿を現す。漱石の豊饒なテクストを横断して示す、犀利な「読みの方法」。
目次
序章 漱石の方法
第1章 次男坊の記号学
第2章 長男の記号学
第3章 主婦の記号学
第4章 自我の記号学
第5章 神経衰弱の記号学
第6章 セクシュアリティーの記号学
終章 方法としての東京
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
13
1999年刊行。石原氏が小森陽一とともに漱石研究の主流の位置を占めたあたりか。大家による印象論とは異なりテクストに忠実な読みを提示したのが強みだ。先行研究への目配りの良さは抜群で、とくに80年代の文芸系ニューアカ語彙を自家薬籠中のものとして自在に使いこなす。その意味で石原氏は「子分肌」(というコトバを作ったのは、いとうせいこうあたりだったか?)の人なんである。本書は蓮實重彦「夏目漱石論」の方法を穏健化し、柄谷行人「日本近代文学の起源」の視点をベースとする。元をたどればフーコーやらバルトやらだろうけれど。2021/02/04
ほたぴょん
2
人生を変えた本を10冊選べ、といわれたら、多分その中に入ってくる一冊。卒論を書くちょっと手前くらいに読んだ。卒論テーマとは全く関係なかったけど、蒙を啓かれるとはこういう事かと思ったもんだ。