内容説明
「戦意昂揚」「銃後の節倹」「増産体制確立」…。戦時体制下、国策プロパガンダを担ったプロダクションが存在した。報道技術研究会―広告界の錚々たるメンバーが集い、革新的な技術とシステムを生み出した。この仕事師集団の全貌を解明し、戦前から戦後を貫く広告技術の潮流を探る。
目次
第1章 広告の1920~30年代
第2章 「報道」と報研の胎動
第3章 太平洋報道展をめぐって
第4章 太平洋戦争下の報研
第5章 「報道」の戦後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つまみ食い
6
断絶した異常な時代としての「戦時中」と広告の関係ではなく、平和を謳歌した大正モダンから戦時中、そして米英の旗を踏む横断歩道が銀座にあったような状況(165)から米英の旗を振る戦後の広告界がシームレスに繋がるものであったと示す。近年の類書で『ラジオと戦争』も気になっている。2023/08/31
Takao
3
1998年12月10日発行(初版)。戦時中のプロパガンダについて書かれたものと誤解して求めたもののようだ。戦争中のプロパガンダがどうなっていたのか、書棚での「長い眠り」の中から手に取ったが、今でいうデザイナー、コピーライターなどの広告人たちが戦前・戦中・戦後どう歩んできたか、という「広告史」のような内容だった。理解したのは、そこには戦前と戦後の断絶、国策に協力したことへの「悔恨」のようなものが全くと言っていいほど見られないこと。この業界には、現代においても「国策」への無批判な協力がないのかどうか…。2022/05/01
水無月十六(ニール・フィレル)
3
戦前から戦後にかけて日本で作られたプロパガンダ広告に携わった人々や、プロパガンダ広告についてのまとめ。何となく呼んでいて物足りなさがあったのは、すでに他の方の感想にでているように、元広告マンの著者ではあるが、事実のまとめ以上の要素が少なかったからなのだろう。テーマに対する著者自身による見解がもう少し欲しかったが、戦中プロパガンダ広告の概説を知ることができたのは面白かった。関心に応じて参考文献を読み漁っていきたい。2022/03/14
gorgeanalogue
3
10年ぶりくらいに再読。中盤まで特に、組織の成立や変遷の経緯を追うだけで精一杯の観があって、もっと突っ込んでほしいと思うのだが、それも報研のデザイナーたちを糾弾せずに距離を取りつつ位置づける、ことに腐心しているからかもしれない。それにしても、こうした文章で引用過多の印象を与えないように叙述していくのは難しいなあ。2017/05/24
じろう
1
戦前から戦後までの広告屋の人物や履歴の羅列。分析がない。戦争への加担批判を書けと言ってるのではない。もう少し踏み込んだ記述をしてほしい。あるいは広告屋というものが今も昔も底の浅い商売だからか。最後に少し触れられた藤田嗣治が批判を受けフランスへいってしまったのが広告屋と芸術家の違いなのか。少なくとも藤田のアッツ島玉砕は名画だと思う。山下パーシバル会談も藤田の作品なんだなあ。2018/07/20