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出版社内容情報
観測されたデータから、その原因を見つけだす――これを「逆問題」と言う。この自然科学の本質的手法に、数学が新たな光を与えた。「逆問題」とは、「結果から原因を推定する」数学の一分野のことです。古典物理学で説明不可能な現象が顕在化し、その限界が意識され始めた19世紀末ごろから、観測結果に基づいて現象の原因を決定するという、逆問題の研究が始まり、大きな数学の研究分野に成長した。
これに対して、「与えられた原因から起こり得るべき結果を予想する」のが、通常の問題で「順問題」と言います。
例えば、静かな水面に石を投げ入れるとき、その石の質量や形状、速度などの情報から水面に生じる波紋の様子を予測するのが「順問題」で、逆に、水面に生じた波紋のデータから投げ入れた石の質量や形状、速度を割り出す問題が「逆問題」です。
この「逆問題」の考え方は、応用数学の中で、現在最も注目され利用されている分野です。X線の断層撮影(CT)や非破壊検査、不鮮明な画像の復元、地震波による地質構造の解析などは、すべて「逆問題」の応用分野です。このように、「逆問題」は数学者にとっての最もホットな分野というだけでなく、工学研究者や学生にとってもたいへん重要な考え方です。
本書では、「プランクのエネルギー量子の発見」「恐竜絶滅の謎」「海洋循環」などの興味深い実例を取り上げて、「逆問題」の考え方解説します。
■第1章 逆問題とはなにか
未知なるもの/内部を探る/逆問題の規定/誤差に対する鋭敏性/演算の方向/重力探査/積分方程式と逆問題
■第2章 史上最大の逆問題
逆問題の哲学/衝突仮説/地上からの隕石推定/衝突の論文/恐竜絶滅のクレーター探し/チチュルブクレーターの直径/決定的証拠
■第3章 振動の逆問題
振動と順問題/バネの等時性/振り子の運動/ホイヘンスの振り子/逆問題/逆解析/追加すべき観測データ/最終回答/からくり
■第4章 プランクのエネルギー量子発見
壮麗な逆問題/黒体放射/1段目の滝、放射公式/新たな展望/2段目の滝、エネルギー量子の発見/逆問題:エネルギー量子の決定/プランクからアインシュタインへ
■第5章 海洋循環薬問題
海洋学と逆問題/コリオリの力と地衡流/地衡流の運動方程式/地衡流の力学計算/基準速度を決定する逆問題/逆解析の原理/逆のパス
■第6章 逆問題としての連立1次方程式
最小2乗解/過剰決定系・不足決定系/最小2乗解の方程式/長さ最小の最小2乗解/ムーア-ペンローズ逆行列/特異値分解
■第7章 逆問題のジレンマ
正則化法/クイズ/チホノフ正則化解/特異値分解とチホノフ正則化/積分方程式の不安定性/逆問題源流探訪/放射性物質逆問題の正則化解
■第8章 量子散乱の逆問題
量子力学速成コース/シュレディンガー/量子散乱/ハイゼンベルクのS行列/散乱の逆問題/逆スペクトル問題/非線形波動
参考文献および注釈
さくいん
上村 豊[カミムラ ユタカ]
著・文・その他
内容説明
原因から結果を予測する―これは、順問題。結果から原因を探る―これが、逆問題だ。古典物理では説明不可能な現象が顕在化しその限界が意識され始めた19世紀末頃から、観測結果に基づいて現象の原因を決定する逆問題の発想による研究が始まった。
目次
第1章 逆問題とはなにか
第2章 史上最大の逆問題
第3章 振動の逆問題
第4章 プランクのエネルギー量子発見
第5章 海洋循環逆問題
第6章 逆問題としての連立1次方程式
第7章 逆問題のジレンマ
第8章 量子散乱の逆問題
著者等紹介
上村豊[カミムラユタカ]
1953年、東京大学理学系研究科数学専攻修士課程修了。現在、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授、東京大学教養学部非常勤講師。博士(数理科学)。1994年、ウェールズ大学およびサセックス大学客員研究員。専門は数学解析学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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