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九年前の祈り

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  • サイズ B6判/ページ数 221p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062192927
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

幼い息子と共に故郷に戻ってきたシングルマザーのさなえ。各紙文芸時評で絶賛された痛みと優しさが胸を打つ〈母と子〉の物語。

「握っていなければならぬ貴重な手がふと離れてしまうとき、あたりにたちこめるとりとめのない時間は、甘美な苛酷さへとまがまがしく変容する。その一瞬に立ちあった者の心の乱れは、容易にはおさまるまい。『九年前の祈り』は傑作である。」─蓮實重彦氏
「彼女が水辺で、異次元に生きているかのようにも思われる息子と、突然に手をつなぐ。その電撃的な清冽さによって、この小説は尊い。」──朝日新聞・片山杜秀氏

「『現代』と『神話』の同居しているところに作品の愉悦がある」──毎日新聞・田中和生氏

「最も力のある作品」「悲しみに折れない人間の手応えが伝わってくる」──東京新聞・沼野充義氏

「すべてのものを飲み込んでしまうおおらかなたゆたいの中で、小さな粒を、一つのメルヘンとも呼べる澄んだ真珠に育て上げた。」──読売新聞・待田晋哉氏


など、各紙文芸時評で絶賛された傑作!


三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、美しい顔立ちだけを息子に残し、母子の前から姿を消してしまったのだ。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。
九年の時を経て重なり合う二人の女性の思い。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語。

【著者紹介】
大分県蒲江町(現佐伯市)出身。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得退学。マリーズ・コンデを論じた博士論文でパリ第8大学Ph.D。
1996年、新潮学生小説コンクールでデビュー。2001年、「水に埋もれる墓」で第12回朝日新人文学賞受賞。2002年、『にぎやかな湾に背負われた船』で第15回三島由紀夫賞受賞。2003年、「水死人の帰還」で第128回芥川龍之介賞候補。2008年、「マイクロバス」で第139回芥川龍之介賞候補。2013年、「獅子渡り鼻」で第148回芥川龍之介賞候補。同年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞し、『獅子渡り鼻』で第35回野間文芸新人賞候補。
2006年に東京大学教養学部助手、2007年に明治学院大学文学部専任講師に就任(現代フランス語圏文学)。2012年から朝日新聞書評委員。2013年准教授。2014年立教大学文学部文学科文芸・思想専修准教授。その他の著作に『森のはずれで』『線路と川と母のまじわるところ』『浦からマグノリアの庭へ』『夜よりも大きい』など多数。

内容説明

三十五歳になるシングルマザーのさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった。表題作「九年前の祈り」他、四作を収録。

著者等紹介

小野正嗣[オノマサツグ]
1970年生。大分県出身。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得退学。パリ第8大学Ph.D。2001年、「水に埋もれる墓」で第12回朝日新人文学賞受賞。’02年、「にぎやかな湾に背負われた船」で第15回三島由紀夫賞受賞。現在、立教大学文学部文学科文芸思想専修准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

446
終結部で海の中を覗き見るシーンは、その内容は全く違うのだが、「限りなく透明に近いブルー」のエンディングを連想させる。それが透明であり、「永遠」へとわずか一瞬ながら飛翔するイメージの鮮烈さゆえだろうか。また、小説全体では古井由吉等の「内向の世代」を想起させる。すなわち、小説としての斬新さは持たないのだが、一方でこの地で生活する女たちの強固なまでのしたたかさは圧倒的でさえある。そこに帰還したデラシネたるさなえとの違和は大きい。「祈り」もまた、さなえ自らのものではなく、他者のものである。さなえの孤独は深い。2015/09/10

遥かなる想い

356
第152回芥川賞受賞。 表題作はシングルマザーの さなえとミツさんの心の 交流を描く。 読んでいてひどく心静かに なるのは著者の筆力なのだろう。 父がいない、母と子の人生は もしかしたら現代の側面を 描いているのかもしれない。 子のために生きる女性たち への応援歌なのだろうか。 過疎の島でさなえは九年ぶりに ミツに再会しようとするが…九年前のカナダへの 旅を交錯させながら、 現代に生きる母と子の あやうさを静逸に描く…そんな話だった。 2015/03/21

ナイスネイチャ

183
図書館本。うーん合わなかった。引きちぎられたミミズも皆さんの感想にもあるようにウンザリするぐらい出てきて・・。やっぱり芥川賞は合わないのかな?すいません。2015/11/27

starbro

180
通常だと受賞してから出版されるので、図書館の予約準備が出来ますが、本作は出版後に受賞したので、出遅れました。ただ今回は、勤務先の図書館互助会のおかげでこのタイミンングで読めました。小説として上手くまとまっていて完成度は高いと思いますが、新しい才能といった強いエネルギーは感じられませんでした。また売れない芥川賞作家を誕生させた感があります。すごい才能・作品がない場合は受賞作なしといった英断を期待したいと思います。日本ホラー小説大賞を見倣って欲しいなぁ!2015/02/24

シナモン

177
日曜美術館司会の小野正嗣さん。一度も作品を読んだことがなかったので手にしてみた。時折「引きちぎられたミミズ」が顔を出す困難を抱えた息子を持つさなえ。息子が重い病気を患うみっちゃん姉、こどもができなくて離縁させられた千代子。「どこの世界に明るいだけの人がおるんか…」海辺の小さな集落で人は懸命にしかし淡々と今日を生きていた。その姿はひっくり返って前脚で宙を掻くウミガメにも似ていた。4つの短編がゆるく繋がっている。冒頭の「兄、史敬に」が切なかった。いかにも芥川賞という感じですが読みやすい方だったかな。2020/07/25

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