出版社内容情報
幼い息子と共に故郷に戻ってきたシングルマザーのさなえ。各紙文芸時評で絶賛された痛みと優しさが胸を打つ〈母と子〉の物語。
「握っていなければならぬ貴重な手がふと離れてしまうとき、あたりにたちこめるとりとめのない時間は、甘美な苛酷さへとまがまがしく変容する。その一瞬に立ちあった者の心の乱れは、容易にはおさまるまい。『九年前の祈り』は傑作である。」─蓮實重彦氏
「彼女が水辺で、異次元に生きているかのようにも思われる息子と、突然に手をつなぐ。その電撃的な清冽さによって、この小説は尊い。」──朝日新聞・片山杜秀氏
「『現代』と『神話』の同居しているところに作品の愉悦がある」──毎日新聞・田中和生氏
「最も力のある作品」「悲しみに折れない人間の手応えが伝わってくる」──東京新聞・沼野充義氏
「すべてのものを飲み込んでしまうおおらかなたゆたいの中で、小さな粒を、一つのメルヘンとも呼べる澄んだ真珠に育て上げた。」──読売新聞・待田晋哉氏
など、各紙文芸時評で絶賛された傑作!
三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、美しい顔立ちだけを息子に残し、母子の前から姿を消してしまったのだ。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。
九年の時を経て重なり合う二人の女性の思い。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語。
【著者紹介】
大分県蒲江町(現佐伯市)出身。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得退学。マリーズ・コンデを論じた博士論文でパリ第8大学Ph.D。
1996年、新潮学生小説コンクールでデビュー。2001年、「水に埋もれる墓」で第12回朝日新人文学賞受賞。2002年、『にぎやかな湾に背負われた船』で第15回三島由紀夫賞受賞。2003年、「水死人の帰還」で第128回芥川龍之介賞候補。2008年、「マイクロバス」で第139回芥川龍之介賞候補。2013年、「獅子渡り鼻」で第148回芥川龍之介賞候補。同年、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞し、『獅子渡り鼻』で第35回野間文芸新人賞候補。
2006年に東京大学教養学部助手、2007年に明治学院大学文学部専任講師に就任(現代フランス語圏文学)。2012年から朝日新聞書評委員。2013年准教授。2014年立教大学文学部文学科文芸・思想専修准教授。その他の著作に『森のはずれで』『線路と川と母のまじわるところ』『浦からマグノリアの庭へ』『夜よりも大きい』など多数。
内容説明
三十五歳になるシングルマザーのさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった。表題作「九年前の祈り」他、四作を収録。
著者等紹介
小野正嗣[オノマサツグ]
1970年生。大分県出身。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程単位取得退学。パリ第8大学Ph.D。2001年、「水に埋もれる墓」で第12回朝日新人文学賞受賞。’02年、「にぎやかな湾に背負われた船」で第15回三島由紀夫賞受賞。現在、立教大学文学部文学科文芸思想専修准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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